●東京地裁 平成15年(レ)第437号 不当利得返還請求控訴事件(平成17年5月24日言渡)GE
●裁判官 水野邦夫 槐智子 早山眞一郎(第48部)  代理人 園山
●原審
 東京簡裁 平成15年(ハ)第25号 不当利得返還請求事件

●要旨

◎ 控訴人の陳述書、本人尋問の結果および文書提出命令に従わないことによる真実擬制(民訴法224条3項)によって、控訴人の推計計算を認めた

◎ GEが、17条書面及び18条書面を控訴人に交付したことについて、ほとんど立証をしないばかりか、10年以上を経過したデータは削除しているなどと主張し、自ら取引経過についての解明を困難に導くような対応をしている。以上のような被控訴人の本訴における対応に照らすと、被控訴人は、利息制限法に違反する利息の弁済を控訴人から受けながら、本件取引にみなし弁済の適用が認められず、過払金が発生しうることを知っていたと認めるのが相当である。これに対し、被控訴人は、みなし弁済の立証が結果的にできないということと当時みなし弁済の認識を有していなかったこととは異なると主張をする。しかしながら、客観的な裏付けもなくみなし弁済が成立すると認識していたと主張するだけでは悪意の認定を揺るがすことはできない、としてGEが悪意の受益者であることを認めた。

◎ 実質的には同一当事者と評価できる者の間における、向じく同一の継続的消費貸借契約と評価できる契約関係の下で、取引が時期を異にして存在する場合において、先行取引で既に発生している過払金については、不当利得返還請求権が発生するのみと解し、これと後行取引による貸付金が併存し、過払金(不当利得返還請求権)については民法所定の年5パーセントの割合による利息のみが発生し、貸付金については約定による利息及び遅延損害金が発生すると解するとすれば、当事者の公平の観念に反する結果を招くことは否定できない。また、前記のような通算を認める継続的消費貸借契約関係の下では、控訴人において新たな借入れをしたときに過払金が発生していることを認識していれば、過払金を新たな借入金の返済に充当して通算し、借入金の元金を少しでも少なくする取扱いを望んだであろうことは疑いがないところ、控訴人が既発生の過払金を認識せずに新たな借入れをした場合にも、同様の取扱いをするのが当事者の合理的意思に合致するといえる。以上によれば、借入れと返済を継続し、これを通算する扱いとする継続的消費貸借契約関係においては、先行する取引において発生した過払金は、後行取引の借入金が発生した時点で当然にその弁済に充当され、通算する扱いとなると解するのが相当である、として、先行取引と後行取引が1000日以上も中断した事案において、後行取引の借入金が発生した時点での先行取引の過払金の当然充当を認めた。

◎ 一般に多重債務者が債務整理を行うためには債権者、債務者間の取引履歴を正確に把握した上で、両当事者間の適正な権利、義務関係を明らかにして、債務者の更生と債権者間の公平を図るための計画を立案する必要があるから、GEは、控訴人の取引履歴開示要求に応じるべき信義則上の義務があったというべきであり、控訴人の債務整理のためであることを認識しながら、被控訴人が取引履歴の開示要求を拒絶することは、特段の事情がない限り、社会的相当性から逸脱する行為として、不法行為となるというべきである。
  GEは、取引の履歴については、10年を経過したものは自動的に順次削除するコンピューターシステムが導入されており、開示しようにも不可能であると主張し、開示拒否が不法行為となるという主張に対して、被控訴人が開示しないことには正当な理由があると主張するようである。しかしながら、被控訴人が貸付と返済を繰り返し、これを通算していく継続的取引をしながら、最終の取引時期がいつかにかかわらず、10年を経過した部分から順次削除するとしていることについては合理的な理由がなく、また、GEは報告書を提出するのみで、データを削除するシステム・プログラムの説明書やシステムに移行した当時の資料や担当者の報告書など、データ削除のシステムが存在することを示す客観的な証拠を何ら提出していない。以上によれば、被控訴人において10年を経過したデータが自動的に削除されるシステムが導入されているとの事実を認めることはできない。したがって、GEによる本件取引履歴開示拒否については、社会的相当性からの逸脱が妨げられるべき特段の事情は認められず、不法行為となる、として、慰謝料、弁護士費用各10万円を認めた。

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