●050810 東京高裁 浜松信用金庫
●東京高裁 平成17年(ネ)第144号 保証債務履行請求控訴事件(平成17年8月10日言渡)
●裁判官 石川善則、井上繁規、河野泰義(22民事部)  ●代理人 佐々木、岡島 他
●原審 静岡地裁浜松支部 平成12年(ワ)第454号

●担当弁護士のコメント

◎ システム金融の債務者が破綻必至の状態にあることについて,保証人に黙示の動機の錯誤を認めた。
まず,一般論として,保証契約時に主たる債務者が破綻状態にないことは,保証しようとする者の動機として,一般に,黙示的に表示されていると解すると明快に述べている。

◎ その後,本件では,(1) 情誼的保証人であったこと (2) 高齢かつ病弱で自宅が唯一の担保であったこと,(3) (1)(2) について,金融機関は調査により認識していたこと (4) 保証人は,信用金庫の次長に対して「大丈夫ですか」と確認したところ,「大丈夫です。」と返答があったのでこれを信じて保証を決断した(原審では,認定されず,この点を認定してもらった点は大きい)から,黙示の動機の表示があったことは明らかであるとした。

◎ 調査義務を認めてもらえなかった点で,最良の判決ではありませんが,システム金融について容易に調査すれば,できたにも関わらずしなかったから,錯誤が認められてもやむを得ないと,錯誤の判断の中に,実質的な調査義務を認めた記載があり,一歩前進です。

【事件の概要】
◎ この事件は、平成10年のときの小渕内閣主導の信用保証協会による特別信用保証枠を実施された金融安定化融資に絡む事件で、制度要綱上、無担保無保証で実施されていた県保証協会付き融資について、債務超過に陥っている訴外会社が地元の浜松信用金庫に融資を申し込んだところ、財務内容が悪いことから要審査となり、会社経営者の妻の兄(依頼者)に保証と自宅担保を条件に2500万円の融資を県保証協会付き融資がなされたが、融資後4ヶ月で訴外会社は不渡りを出し破綻した。浜松信用金庫は、依頼者の保証人に対して保証履行請求したので、保証責任の存否を争っている事件です。

◎ 破綻の原因は、もともと訴外会社は大幅な債務超過の会社であって、融資当時、日栄、商工ファンド計1800万円余の借入金と年利数百パーセントから数千パーセントの1110万円余のシステム金融に対する債務を負っており、システム金融を放置していれば、いずれ破綻することになることが明らかであったが、浜松信用金庫は、日栄、商工ファンド等ノンバンクへの支払を優先させ(担当者がつききりで返済に同行した。)、訴外会社は、運転資金とシステム金融に対する手形、小切手への支払に窮してしまったことが主原因です。

◎ 保証人の兄は、72才、腎臓病を患っており、わずかな年金収入(年100万)しかなく、訴訟費用、弁護費用にも事欠く状態で、唯一の資産は自宅であって、その自宅に今回の抵当権が設定されている。

◎ 原告の浜松信用金庫に訴外会社の当座預金があり、少しの調査をすれば毎日のように不審なシステム金融の小切手が決済されていることは明らかであり、前年の決算書にもシステム金融の小切手の存在が記録されており、また融資直前、信用金庫から「この小切手はなにか」とまで指摘されていた(会社経営者は、誤魔化した。)位であり、浜松信用金庫は、システム金融の存在を充分知りうる立場にあった。

【担当者から一言】
◎ 本判決について、平野裕之慶応大学法科大学院教授から、以下のコメントをいただいた。
  本判決は「およそ融資の時点で破綻状態にある債務者のために保証人になろうとする者は存在しないというべきであるから、保証契約の時点で主債務者がこのような意味での破綻状態にないことは、保証しようとする者の動機として、一般に、黙示的に表示されているものと解するのが相当である」と判示している。これによれば、債権者は、「融資の時点で破綻状態にある債務者」の保証人については、債権者は保証人にそのことを告げて,それでも保証人になるか、保証人に原則として支払わされることになるが万が一再建すれば支払わなくて済む可能性があるにすぎないことを説明し、保証意思を確認してからでないと有効な保証を取得できないことになる。 詐欺ではなく錯誤が問題とされているので、債権者の主債務者の破綻状態を知らないがため、この説明ができなくても、保証人が錯誤無効を主張できることは変わらないことになる。従って、保証人としては、当時主債務者が既に破綻状態にあったこと、自分がそれを知らなかったことを証明すればよく、債権者側の事情については主債務者の破綻状態を知っていた当の事実は証明する必要はないことになる。

◎ 商工ローンへの応用
   本件は,一般金融機関の特定保証の事案ですが,商工ローンの根保証,特に追加融資時に応用することができ,活用範囲が広いと思います。最初の契約時に,必ずしも破綻状態でない場合が多いですが,追加融資時には破綻していると立証できる場合が多いとおもいます。追加融資時以降の融資の保証を錯誤無効できれば,追加融資前の融資は,利限法の再計算によって,ほとんど残債はない状態になると思われますので,保証人を狙った,シティズ,SFCG,ロプロ等全ての商工ローン業者のほとんどの契約に実効性があると思います。アプローチとして,・根保証時に将来追加融資する際に,破綻している債務者に保証しないことが黙示の動機が表示されている ・追加融資時における債権者の通知に,私法上の意味を持たせる。いずれかの方法で,追加融資時おける破綻状態にないことの錯誤を勝ち取ることです。

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