●080905 横浜地裁 武富士 相殺により消滅時効を否定
●横浜地裁 平成20年(ワ)第1274号 過払金返還請求事件(平成20年9月5日言渡)
●裁判官 三代川俊一郎(6部) 
●代理人 小野

●要旨

◎ ともにリボルビング契約であり店番・会員番号とも同一の2口の取引について,利息や遅延損害金の利率・各回の最低弁済額・借入限度額等の契約の重要な要素が異なること,1年2月の空白があること及び第2取引が偶然に開始されていることから充当の合意があったと推認できる特別事情がないものとして一連計算を否定。
◎ 過払金の発生事実を取引終了時に原告が認識していたかどうかには疑問もあり,権利を行使することができる時(民法166条1項)をどのように解釈するかは問題があるが,引き直し計算により,過払金が発生した年月日を「権利を行使することができる時」とみるのが相当であるとして,第1取引の過払金返還請求権は時効消滅しているとした。
◎ しかし以下のように判示して,第1取引の過払金(約132万円)をその後の借入金との相殺における反対債権に供することができるものとして,結論的に一連計算した場合と同一の結果を認めた。(第2取引単独でも約204万円の過払金)
◎ 債権が消滅した後になってされた相殺の意思表示が原則として効力を生じないことは主張のとおりであるが,その効力の発生が否定される理由は,返済を受けた当事者の期待を保護する点にあるというべきである。
   ところで,本件のような過払金返還請求訴訟においては,利息制限法所定利率による引き直し計算を行い,いわば過去の弁済の効果を一部覆して計算をし直すものであるから,弁済により債権が消滅しているという前提そのものが崩れており,過去の弁済により債権が消滅したという事実を維持する必要はないことになる。また,問題の性質上消費者金融業者である被告の期待を保護する必要性も否定される。また,過払金の有無及びその額は,引き直し計算によって,初めて確定するものであるから,比喩的にいえば,相殺過状は,引き直し計算によって,初めて発生すると考えることもできないではない。その効果は過払金発生年月日に遡るとしても,以上の諸点を考慮すれば,意思表示の時点で相殺適状が現に存在しなければならないとする原則は,この種訴訟では考慮する必要はないと解する。
   なお,原告の相殺の意思表示は順次相殺という包括的なものであり,相殺充当の特定性(額及び充当債権)に問題がないわけではないが,これも許されるものと解する。
   そうすると,第1取引の終了時点で過払金(及び法定利息)が発生し,第2取引の開始時点以降相殺適状を生じ,順次借入金債務に充当されることとなることから,結論的には,第1取引と第2取引とを一連計算したのと同一の結果となる。。

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