●051130 静岡地裁浜松支部 過誤払い
●静岡地裁浜松支部 平成16年(ワ)第498号 預金返還請求事件(平成17年11月30日言渡)
●裁判官 久保孝二  ●代理人 中川

●要旨

◎ 事案  預金通帳と印鑑を窃取されたが、その事実に全く気づかない間に、銀行の窓口で550万円を引き出されてしまい、その際に窓口に来た者が、本人確認書類として提示した運転免許証は、本人が届け出ていた「氏名、生年月日」とは一致するものの、「住所」は住所と異なっていた。窓口で応対した行員は、住所が違っていることに気づき、住所変更届をするように促したが、急いでいるから、という理由で断られてしまったので、それ以上の確認をせずに、550万円を払い戻したというもので、被告は,抗弁として,本件取引による払戻しは預金規定による免責約款により免責されるし,民法478条の債権の準占有者に対する弁済として有効である旨主張して争った。
◎ 判決は、全国銀行協会や被告●銀行、●銀行などの多くの銀行が用意しているパンフレットにおいて、「本人確認書類に記載されているお名前や住所が、現在のものと異なる場合は、お取引ができないことがありますのでご注意下さい」と記載されていること、郵便局においては届出住所と現住所とが異なる場合には、通帳等の住所を確認する補足本人確認書類の提出を求めていることなどから、被告銀行の過失の認めた。
◎ また、被告からの「取引の大量性、迅速性、簡便性のため」という理由付けに対しては、「本件払戻請求がなされる相当以前から、預金の不正引出しが社会的問題となっており、本人確認法が施行されるなど本人確認の必要性が唱えられ、本件払戻請求があった平成16年7月当時、すでに、顧客のニーズとしても、簡便に預金の払い戻しができるようにしてほしいという要望の一方で、預けている預金を不正に引き出されることなく安全に管理してほしいという要望も相当高まっていた」として、「銀行取引における大量性、迅速性、簡便性といった点をとらえて、住所確認が本人確認書類により確認できないまま、補足本人確認書類の提示を求めることなく本件払戻請求に応じてしまった行為がやむを得ないものであり、債権の準占有者に対する弁済として過失がなかったということはできない。」とした。

◎ 本人確認法の基準が、預金者保護のための本人確認の基準となることを(暗に)認めた判決で、消費者保護のために異議のある判決だと思います。
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