●070228 徳島地裁
●徳島地裁 平成14年(ワ)第288号 立替金請求事件、
同庁 平成14年(ワ)第408号 債務不存在確認等請求事件、
同庁 平成15年(ワ)第331号 債務不存在確認等請求事件
●裁判官 阿部正幸(2部) 
●代理人 島尾ほか

●要旨

第1 事案の概要
1 承継前原告(亡A)は主婦である。Aは、若い頃から躁鬱病の症状があり、昭和60年に勤め先を退職し、平成4年、原発性胆汁性肝硬変(PBC)と診断された。Aの症状は次第に増悪し、平成12年夏頃には、躁鬱病、PBC、肝性脳症に由来する精神神経障害が発症した。精神神経障害とは、具体的には、睡眠一覚醒リズムの逆転、感情の変化、記憶力や見当識の障害、幻覚や錯覚、構音障害、運動失調、異常行動、興奮・せん妄、錯乱、昏睡など極めて多彩な症状が生じるとされている。
2 こうして、Aは、平成12年8月から平成13年12月までのわずか1年5か月(17か月間)に、総額5978万7728円(1月当たり351万6925円)もの着物等を現金、クレジット契約等で購入した。▲の取引は、総額2747万0823円(総額の約46%)を占め、クレジットの空き待ち分(解除済み)883万0217円を加算すると、総額3630万1040円にも達していた。
3 そこで、Aは、▲、■に対し、既払い代金の返還、未払い代金債務の不存在確認、■の仮差押につき不法行為に基づく損害賠償を各請求する訴訟を提起した。その後、Aは、PBCの藩化により死亡し、夫(B)、子(C)が訴訟を承継した。
4 原告の主張は次のとおりである。
(1)無断契約(契約意思の不合致)による契約の不成立
(2)公序良俗違反等
(3)クーリングオフ
(4)詐欺取消し、錯誤無効
(5)取引的不法行為
(6)消費者契約法4条による取消し
第2 判決の内容
1 契約の不成立、クーリングオフ、詐欺取消し、錯誤無効、消費者契約法4条による取消しは、いずれも否定。
2 公序良俗違反、権利濫用、取引的不法行為の主張について
(1)Aの行為は、客観的に見て、明らかに異常な浪費行為に当たる(29頁)。もっとも、被告らの担当者が、本件取引時において、Aが精神神経障害を発症していたと認識できたとは認められない(30頁)。
(2)しかし、販売店は、不当な過量販売をしない義務、これと提携するクレジット会社も、これに応じて不当に過大な与信をしてはならない信義則上の義務を追っている。不当な過量販売に当たるか否かは、顧客の職業、資力、年齢等に照らし、個々具体的に判断されるべきであり、その不当性が著しいと判断された場合には、販売契約及びこれに関連するクレジット契約が公序良俗に反し無効とされる場合がある。(30、31頁)
(3)本件取引においては、遅くとも、各被告とAとの取引総額が2000万円を超えた時点より後においては、各被告らは、過量販売に当たるものとして以後の販売、与信取引を差し控えるべき信義則上の義務があり、少なくとも、この時期以降の取引は公序良俗に反して無効である(31頁)。
(4)本件立替払契約には、契約条項に、購入者は、商品の販売について▲に生じている事由があるときは、その事由が解消されるまでの間、支払いを停止できるとの規定がある。原告らは、■の請求を、▲との売買契約の無効を理由に拒絶できる。(34頁)
3 仮差押につき、不法行為が成立することは否定(35、36頁)。

右クリックで判決PDFの表示か保存を選択 (4.53MB)


検索結果一覧へ戻る
検索システムTOPへ戻る

アクロバットリーダーダウンロードはこちら
PDFファイルをご覧いただくには、
Adobe Acrobat Reader
もしくはAdobe Readerが必要になります。
お持ちでない方は、アイコンをクリックして
ダウンロードしてください。



※要旨は、検索の便宜のためのもので、内容に責任は持ちません。
著作権は兵庫県弁護士会にありますが、引用やコピーは自由です。