●070524 津地裁 期限の利益
●津地方裁判所  平成18年(レ)第26号 保証債務履行請求控訴事件(平成19年5月24日言渡)
●裁判官 水谷正俊、久保孝二、薄井真由子(2部) 
●代理人 石坂ほか
■の上告棄却(080904 )

●要旨

◎ 約定の利息と遅延損害金が同率で期限の利益喪失特約のある消費貸借契約において、借主の返済が約定の期日に遅れたが、その後は、約定通りの分割金の支払を続けた事案において、貸主が、上記の遅滞による期限の利益の喪失があったことを前提に請求することができるかという争点について、次の理由で、請求できないとした。
◎ 貸主が約4年半という長期間にわたり約定の分割金の請求をし続けたことで、主債務者及び連帯保証人としては、未だ分割払いができると期待するのが当然であり、貸主としてもこれを許容しているといえる状況にあった。そうすると、こうした状況を解消する措置が講ぜられたといえなければ、貸主が現段階にいたって期限の利益喪失を前提とした請求をすることが権利の濫用ないし信義則違反に該当するとの判断は左右されるものではない。
◎ 貸主が、弁済を受ける度に、期限の利益喪失、遅延損害金の充当及び一括支払いの請求等の記載がある領収書兼利用明細書を主債務者に交付していたとしても、同書面の記載を全体としてみれば,書面を受領した者としては,約定の分割金である6万5000円が請求されているのであって,同支払をすれば足りるものと受け取るのが通常であるから,同書の上記記載では,前記の状況を解消する措置が講ぜられていたということはできない。

●原審

松坂簡裁 平成18年(ハ)第65号 損害賠償等請求事件、
同年(ハ)第144号 保証債務履行請求反訴事件(平成18年10月2日言渡)、
裁判官 鈴木幸男
◎ 貸主は、1回目の支払いから遅滞し、この段階で期限の利益を失ったので、遅延損害金の支払いができると主張した。
◎ これに対し、判決は、貸主は、期限の利益を失った日から約4年半まで、主債務者に約定の分割金の請求をし続け、主債務者の返済が滞った後に連帯保証人に請求をしたが、その際の金額も約定の分割金であった。このような場合には、主債務者、連帯保証人とも、特段の事情のない限り、期限の利益を喪失し、一括弁済をしなければならないという事態になっていることについて誤解が生じ、未だ分割払いができると考えていたと推測できるとして、遅延損害金の請求をするのは権利の濫用ないし信義則違反に該当すると判示した。

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