●071029 東京地裁 商品先物取引
東京地裁 平成18年()第18102号 損害賠償請求事件 平成19年10月29日言渡
裁判官 山崎 勉 武藤真紀子 成瀬大輔(7部) 
代理人 島 幸明

●担当弁護士のコメント

◎ 本件は、原告が、商品取引員である被告に委託して行った商品先物取引について、被告従業員らによる適合性原則違反、説明義務及び断定的判断の提供等の違法行為があったと主張して不法行為(使用者責任)に基づく損害賠償請求をした事案である。
◎ 原告は、大工の仕事に従事しており、取引時は骨折の後遺症のため仕事をほとんどしていなかった年金受給者であり、妻と2人で東京都住宅供給公社の賃貸住宅に居住していた者であり、取引前に、商品先物取引、株取引の経験はなかったが、外国為替証拠金取引の(被害)経験はあった者である。
◎ 本件は、取引後わずか2日間で130枚もの取引を行わせ、780万円もの証拠金を支払わせ、取引開始後わずか2か月余の間に、延べ建て玉枚数745枚、最大建て玉枚数280枚、証拠金合計1680万2575円もの取引を行わせた点に特徴がある。
◎ 判決は、適合性原則については、経歴、収入、生活状況等からして、原告が「本件取引の前には、MMGアローズとの間でFXをしていたが、必ずしもFXの仕組みや危険性を十分認識していたとまでは言い難い」として、「本件取引開始当時普通預金100万円や定期預金約2300万円等を有していたが、両足のかかとを骨折した後遺症で仕事ができない状況にあり、国民年金以外に安定した収入を得ていなかったのであるから、上記預金等の資産は原告の今後の生活資金の引き当てとなるべき性質を有していたものであり」、「またその年齢や経歴等に照らし、原告が商品先物取引の仕組みや危険性を十分理解する能力を有していたとは認められない」として違法性を認めた。また新規委託者保護義務違反についても、当時の被告の限度枚数は3か月50枚とされていたが、「理解力や資産の状況に照らして明らかに過大な取引」を勧誘させたなどとしてこれも認めた。
◎ 過失相殺については、仕組みや危険性が理解できない旨を述べて繰り返し説明を求めたりすることが可能であったこと、それにもかかわらずアンケート等に理解している旨の回答をしたことなどを考慮して、2割とした。
◎ 代理人としても、原告が商品先物取引を行う知識・経験・能力のない者であることは一見して明らかであると考えている。FXについても、「経験」というよりも被害歴と呼ぶ方がふさわしいのであって、これを過失相殺の要素に明示しなかった判示は妥当である。

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