●090802 京都地裁 敷引き特約無効
●京都地裁 平成20年(ワ)第2307号 敷金返還請求事件(平成21年7月2日判決言渡)
●裁判官 辻本利雄 和久田斉 戸取謙治(第6民事部) 
●代理人 木内ほか

●要旨

◎事案の概要
 賃借人は、平成18年4月、家賃月8万9000円、賃借期間2年間との内容で居住用建物の賃貸借契約を締結し、平成20年3月本件賃貸借契約が終了し賃借人は本件建物を明け渡した。この賃貸借契約では、保証金として40万円を差しれることになっており、契約終了後に解約引きとして35万円を差し引くとの解約引き特約が付けられていた。賃借人は、本件特約は、消費者契約法10条に違反し無効であるとして、35万円の保証金の返還を求めた。
◎判決の概要
本件特約について、賃貸借契約に関する任意規定の適用による場合に比し消費者の義務を加重するものであると判断し、消費者の利益を一方的に害するものであるとして、本件特約は消費者契約法10条により無効であるとした。
まず、保証金について、賃貸借契約の基本的内容に含まれるものではなく、その法律上の意味合いは敷金であるのか礼金であるのか等明確ではないことが多いが、本件賃貸借契約においては、敷金同様に賃料その他賃借人の債務を担保する趣旨が規定されている。そうすると本件特約については、賃借人に一切返還しない趣旨のものかそれとも原状回復等にそのような費用を要しなかったときには本件特約を適用しないで返還する趣旨であるのかについては明瞭な約定があったとは評価できず、本件特約は法律上の意味合いを明確にしないまま消費者の義務を加重したものであるといえる。
次に、消費者の利益を一方的に害するかどうかの判断は、消費者と事業者との間に情報の質及び量ならびに交渉力の格差があることにかんがみ、当事者の属性や契約条項の内容、契約条項が具体的かつ明確に説明され、消費者がその条項を理解できるものであったか等種々の事情を総合考慮して判断すべきであるが、本件では、賃借人が法律的知識を有してはいたものの、建物賃貸借上の諸条件につき一般の消費者以上の情報を有していたとは認められないのに対して、賃貸人は、貸家業を営んできたものであって建物賃貸借に関する情報を継続的に得ることができる立場にあり、両者の間に情報収集力の格差がある。また、賃借人としては、本件契約について交渉の余地はほとんどかったこと、解約引き額は保証金の87.5パーセントに相当し月額賃料の約4カ月分にも相当するものであり賃借人にとって大きな負担となること、また賃借人は本件特約の趣旨について具体的かつ明確な説明を受けていたとはいえないことから、本件特約は消費者である賃借人の利益を一方的に害するものであるとした。

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