●181005 東京地方裁判所  カードローンの名義冒用 約款適用の可否
●東京地方裁判所(原審 東京簡易裁判所)
  平成30年(レ)第393号
  平成29年(ハ)第37669号(原審)
●裁判官 前澤達朗、実本滋、神本博雄
●代理人 内藤 満

●要旨

1 事案の概要
  本件は、控訴人(以下「X」という。)が名義人となっているA銀行のキャッシュカードを、Xの長女(以下「C」という。)が盗み取り、Cが無断でATMにてA銀行のカードローン基本契約(以下「本件カードローン契約」という。)を締結し、同時に50万円を借り入れた事案で、Xから本件カードローン契約にかかる債務の保証委託を受けたとする被控訴人(以下「Y」という。)からXが求償を受け、原審ではYの請求を認容する判決が出されたが、控訴審においてYの請求が棄却され、Xの求償金支払義務を否定したという事案。

2 本件の争点
(1) Xが本件カードローン契約等の各申込みを行ったか否か。
(2) X本人が本件カードローン契約等の各申込みを行っていない場合でも、ATMカードローン規定ないしA銀行キャッシュカード規定等に基づき、Xが求償金支払債務を負うか否か。

3 判決要旨
(1) 争点(1)について
@ 本件キャッシュカードの管理状況
XがCと同居していた時期に、XのA銀行のキャッシュカードを含むカード類一式が一時的に無くなったという出来事があり、また、XはCを含む他人にA銀行のキャッシュカードを貸したこともなければ、暗証番号を教えたこともなかった。
A 本件カードローン契約申込みの際の本人確認状況
本件カードローン契約は、ATMにX名義のキャッシュカードを挿入し、暗証番号と生年月日を入力して締結されたものであるが、その際に入力された暗証番号及び生年月日がA銀行の把握するXの暗証番号及び生年月日と同一であったため、A銀行はかかる事実をもって申込者がX本人であると判断し、その後改めて本人確認をすることはなかった。
なお、暗証番号及び生年月日と同時に入力された電話番号はXのものでなく、誰のものかは不明。
B Xの本件キャッシュカード以外のクレジットカード取引概要
平成28年11月頃、Bカードからクレジットカードを利用したことにより発生した立替金の支払いを求められたが、当該カードを利用したのはCであるとの情報が警察から得られた。
その後、XはBカードに対して、上記立替金請求権の不存在確認訴訟を提起し、訴訟外でXとBカードの間になんらの債権債務のないことを相互に確認する旨の合意が成立し、上記訴えは取り下げられた。
以上の@〜Bの事実からすれば、Cが本件キャッシュカードを入手した上で、暗証番号の入力に成功した可能性は合理的に認められ、本件キャッシュカードの利用や暗証番号の入力の事実から、Xの意思に基づく申込の事実が直ちに推認されるものとはいえない。
(2) 争点(2)について
Yは、仮にX以外の第三者が本件カードローンの契約等の各申込みを行ったとしても、XはATMカードローンカード規定5条(1)の件を充たしていないので、貸金返還債務は免責されず、求償金支払債務も免責されない旨主張するが、当該規定は、ATMカードローンを締結した者に適用されるATMカードローン規定を前提とするものであるところ、Xが本件カードローン契約の申込みをしたとは認められないから、Yの主張はその前提を欠く。
また、Yは、A銀行キャッシュカード規定等に基づき、本件キャッシュカードの紛失届出をしていないXは、本件カードローン契約等の締結の効果を受けると主張するが、A銀行キャッシュカード規定には、キャッシュカードを用いたカードローン契約の申込みに関する記載は見当たらない。
したがって、上記規定がキャッシュカードによるATMカードローンを規律するものとは解し難く、Yの主張は前提を欠くものというほかない。

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