●190702 東京高等裁判所 原野商法に加担した宅地建物取引士の責任
●東京高等裁判所(原審 東京地方裁判所)
 平成30年(ネ)第5230号
 平成30年(ワ)第7705号(原審)
●裁判官 萩原秀紀、西森政一、矢向孝子
●代理人 竹村直樹他7名

●事案の概要

 本件土地1を所有する控訴人に対し、被告会社Yの従業員Aが「本件土地を高値で買い取る。」「土地を売ったら税金がかかるので、税金対策のために損失を計上するため、別の土地を購入したことにした方がいい。」「別の土地の購入代金は一旦預かるが、後で返還する。」等と言って控訴人を欺罔し、土地の売買代金及び手数料合計418万円を詐取したという事案。
 そこで、控訴人が、共同不法行為に基づき、被告会社Y、被告会社の代表取締役Z及び被告会社の専任宅地建物取引士である被控訴人の不法行為責任を追及したが、原審では、被告会社Y及び代表取締役Zに対する請求は認容されたものの、被控訴人に対する請求は棄却された。

●本件の争点

 被控訴人は、被告会社Yの違法行為を認識し、又は認識し得たにもかかわらず、被告会社に名義貸しを行うことで、被告会社の違法行為に加担したと言えるか否か。

●判決要旨

 被告会社Yが、被控訴人を被告会社Yの専任宅地建物取引士に選任し、土地の売買契約に係る重要事項説明書の宅地建物取引士欄に被控訴人名の記名押印をしたのは、控訴人に対し、土地の売買が適法な取引行為であると欺罔するためと言える。
他方で、被控訴人が主張する業務内容及び業務時間と、実際の業務実績及び業務対価との間には明らかな不均衡があり、また、被告会社Yの業務と、被控訴人が被告会社Yから受託した業務の間には一定の隔たりがある。しかも、被控訴人は、本人尋問期日を2度にわたり体調不良を理由に欠席したが、いずれも期日直前の申出であって、控訴人から厳しい追及を受けるのを避けるためであったと認められる。
 さらに、組織的に控訴人に対して違法行為を行ったと認められる被告会社Y自身、被控訴人は被告会社Yと控訴人との取引を知らず、被控訴人に無断で重要事項説明書の宅地建物取引士欄に被控訴人の記名押印をしたと認めているにもかかわらず、被控訴人が被告会社Yを非難したり、被告会社Yの責任を追及したりした様子もうかがえない。
 以上によれば、被控訴人は、被告会社Yが組織的に資産を有すると思料される者に対し、遊休土地を高く買い受けるとの話を持ち掛け、同時に手数料や税金対策のため必要であるとして、金員を騙し取るに当たり、被害者に適法な取引と見せかけて安心させるために利用されることを認識し、あるいは認識し得たにもかかわらず、被告会社Yの専任宅地建物取引士に就任し、被告会社Yの違法行為を容易にしたと認めるのが相当である。

以 上

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