くらしの法律相談

1997年 神戸新聞掲載『くらしの法律相談』

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「交通事故の治療費は−加害者不明なら国の保障も」神戸新聞 1997年9月18日掲載

執筆者:原 恒徳弁護士

仕事中、交通事故に巻きこまれるケースは少なくありません。治療費や休業補償など、どこに請求したらいいのか、頭を抱えることも多いようです。

相談者:先日、夫が仕事中に交通事故に遭い、今入院中で、これからの生活が不安なのですが。

弁護士:治療費、入院費、休業補償などについては、まず加害者の自賠責保険に請求してください。

相談者:仕事中の事故なら労災保険も使えるのではないのですか。

弁護士:その通りですが、治寮費や入院費などの療養関係費と休業補償費などについては、まず自賠責保険に請求してください。

相談者:自賠責保険だけでは金額的に不安なのです。

弁護士:確かに自賠責保険には上限があります。これだけでは不足するという場合には、労災保険に請求することができます。

相談者:心配なのは加害者がひき逃げで逃げてしまいまして、警察で調べてもらっていますが、犯人が見つかるかどうか分かりません。こういう場合はどうなるのでしょうか。

弁護士:心配はいりません。加害者が分かるか分からないかで差別されるのは気の毒ですので、あなたのようにひき逃げで犯人が分からない場合は、政府が損害賠償の保障をしてくれることになっています。

相談者:どれくらい保障してくれるのでしょうか。

弁護士:通常の自賠責保険の場合と金額は同じです。

相談者:もう一つ心配があります。

弁護士:何ですか。

相談者:先程、仕事中の事故と言いましたが、会社は私用で動いていた際の事故ということで労災と認めてくれないのです。

弁護士:労働災害かどうか争いになった場合は、ます審査請求を申し立て、最終的には裁判所が決めることになります。

相談者:もし労働災害ではないと判断された場合は、先程の政府の保障しか受けられないのですか。

弁護士:まず健康保険を使って医者にかかってください。

相談者:交通事故の場合、健康保険が使えないと聞いたことがあるのですが。

弁護士:加害者が必ず払ってくれるという保証はありませんので、健康保険を使えないとなると被害者には大きな負担になります。そこで厚生省も通達を出して、交通事故でも保険給付を受け付けるよう指導しています。

相談者:そうすると夫の場合は、政府の保障と健康保険の給付の両方を受けられるということですか。

弁護士:両方だぶって受け取ることはできません。労働災害の場合は労災保険、業務外の場合は健康保験でまず給付を受け、それでも足りない損害についてだけ政府が保障することになります。

相談者:だいたい分かりました。これでちょっと気持ちが楽になりました。ありがとうございました。

弁護士:お役に立てて光栄です。