くらしの法律相談

1997年 神戸新聞掲載『くらしの法律相談』

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「未成年者との売買契約」神戸新聞 1997年10月16日掲載

執筆者:茂木立 仁弁護士

個人情報誌などの流行で、リサイクル品の個人売買が気軽できるようになりました。しかし、法的に気を付けるべき点もあります。ある弁護士のところへ、大学生のいとこが遊びに来ました。

弁護士:久しぶりだね。勉強はちゃんとやってる?今日は忙しくて飲みに行けないけど。

相談者:今日は法律相談があるんですが。

弁護士:何かな。悪いことでもしたの。

相談者:いや、そうではなくて。大学の掲示坂にパソコン売りますという掲示を載せて、買いたいという人が来たから売ったんですけど、「自分は未成年だから売買契約を取り消して、パソコンを返す」と言ってこられてるんですよ。

弁護士:親権者の同意がなかったんなら、原則的には取り消すことはできるから、その場合は、お金を返してパソコンを引き取らなきゃいけないよ。

相談者:そのお金を元手に、新しいパソコンを買ってしまったんだけどな…。絶対だめなんですか。

弁護士:絶対ではなく、例えば営業することを親から許されている場合、その営業に関することであれば、取り消しはできないね。

相談者:でも、今回売った相手は、買うときに「勉強のため」と言っていたから、営業に関することでないことは明らかなんですよ。あ−あ、その人、ほかの大学の人だから全然面識なかったんですけど、最初は「自分はA大学の三回生」と言ってて、実際かなり老けてみえたから、当然二十歳を準えてて、親の同意がいらないなと思ったんですよ。

弁護士:え、そうなの。それだったら取り消せない可能性があるな。法律上では「詐術」というんだけどね。民法上、取引行為をするにあたって、欺くような手段を使って、相手に自己を「能力者」だと誤信させた場合は、実際には「無能力者」であっても保護するに値しないとして、取り消しができないとされているんだよ。

相談者:そうですか。今回の場合はどうなんですかね。

弁護士:大学の三回生というと、当然、二十歳を超えているから、その点を表示したとなると、詐術にあたると考えていいと思うよ。相手に「詐術にあたるから取り消せない。」と言ってみたらどうかな。

相談者:そうですね。言ってみます。ありがとうございました。

弁護士:相談料なんだけど。

相談者:今日おごってもらえなかった分と相殺します。

弁護士:しょうがないなあ。