くらしの法律相談

1997年 神戸新聞掲載『くらしの法律相談』

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「家族間での「窃盗は」?」神戸新聞 1997年12月4日掲載

執筆者:橘 重孝弁護士

家族の間でも、人のお金を勝手に使ったりすると「横領」や「窃盗」になります。しかし、罪に問われるのでしょうか。今回はそんな相談です。

弁護士:どうしましたか、深刻な顔をしていますね。

相談者:実は私も高齢なので、もしものときを考えて一緒に暮らしている息子の嫁に預金通帳と印鑑を預けていました。

弁護士:それで。

相談者:お恥ずかしい話ですが、嫁が勝手に預金を引き出して自分のことに使っているようなんです。

弁護士:それは穏やかではないですね。いつもいい嫁だと自慢していたじゃないですか。

相談者:ええ、私の身の回りの世話もよくしてくれますし、それで通帳を預けていたんです。

弁護士:それで、相談したいということはどういうことなんですか。

相談者:それは、嫁のしていることが罪になるかお聞きしたいのです。

弁護士:なるほど。他の人の通帳を預かっている人が、勝手に預金を引き出して使ってしまうのは、横領という罪に当たります。

相談者:それでは、私が警察へ願い出れば嫁は刑務所へ行くことになるんですか。

弁護士:いいえ、家族の場合は直ちに処罰されることにはならないのです。

相談者:それはどういうことですか。

弁護士:法律では、あなたのように息子の嫁と同居している場合、すなわち同居の親族の間で窃盗や横領罪を犯したときは刑を免除すると定めてあって、処罰されないのです。

相談者:なぜ、罪を犯していながら処罰されないのですか。罪は罪ではないのですか。

弁護士:罪を犯したことに違いないのですが、親族の間で窃盗や横領のような財産に関する罪を犯した場合は、親族間の話し合いに任せましょうというのが法律の考え方なんです。

相談者:先程、同居の親族と言われましたが、私が嫁と別居していれば処罰されるのですか。

弁護士:はい。その場合は処罰されることかあり得ます。ただし、その場合でもあなたが告訴という手続きをして処罰してくださいと願い出なければ、処罰されることはありません。

相談者:私は気持ちが高ぶって嫁が処罰されるかなどとお聞きしましたが、やはり話し合いをする必要かあるのでしょうか。

弁護士:そうですね。できれば息子さんを交えてよく話し合うことか一番大切だと思います。

相談者:よくわかりました。だいぶ気持ちか落ち着きました。ありがとうございました。