くらしの法律相談

1999年 神戸新聞掲載『くらしの法律相談』

<<1999年掲載一覧へ戻る

「海外でのカード利用 容易でない被害の証明」神戸新聞 1999年8月13日掲載

執筆者:内芝 義祐弁護士

海外旅行から帰ってきたら、実際に使った額の数十倍の請求書がクレジット会社から届きました。何が原因でこんなことになったのでしょう。身の覚えのない請求でも支払わなければならないのでしょうか。

学生:先生、夏休みを利用して友人と海外旅行に行ったのはいいのですが、後でレストランでの食事代金として、クレジット会社から30万円も請求されちゃいました。

教授:すごい高級レストランだね。

学生:違いますよ。せいぜい5千円くらいの食事だったんですよ。

教授:じゃお、なぜそうなったのかな。

学生:金額の記載が手書きだったので、お店の人が後で数字を付け加えたのではないかと友人と話し合っているんですけど。

教授:頭に¥とか$とかの記号を付けていなかったのかな。

学生:このようにお店が詐欺を行った場合、法律上、私たち消費者はクレジット会社に代金の支払いを拒めますよね。

教授:この場合、君自身がだまされたと言っていいのかどうかは別にして、結論として消費者は代金の支払いを拒めるだろうね。

学生:やっぱりそうですよね。よかった。

教授:おいおい、安心するのはまだ早いぞ。理論上はそうなるけど、実際の裁判になった場合のことを考えてごらん。請求書には30万円の金額と君の署名かあるのだろ。

学生:それは結果的にそうなっただけです。

教授:だけど裁判官には、数字が後から変えられたかどうかは、見ただけでは分からないじゃないか。君がそうだと言っているだけだろ。君が正しいことをどうやって証明するんだい。

学生:お店の人を呼んでくる。ちょっと無理か。だましたやつは、地球の裏だ。

教授:そうすると、裁判官が君の言い分を信じてくれない限り、裁判では負けてしまうことになるよね。

学生:そんなぁ。正義はどこに行ったんですか。

教授:クレジットカードというものは海外でもとても便利なものだ。不慣れな外国のお金を扱わなくて済むしね。

学生:だけど日本と同じ感覚で使ってはいけないということですね。

教授:日本でなら安易にクレジットカードを使っていいというものではないよ。やはり内容を確かめてから署名すべきだし、カードを安易に友達に貸したりするのもよくないね。使い過ぎた結果、破産したという人はいっぱいいるんだよ。

学生:なるほど、クレジットカードは便利だけど、その分注意して使わなければいけないんだ。