くらしの法律相談

1999年 神戸新聞掲載『くらしの法律相談』

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「遺産の相続放棄-生命保険は受取人の財産」神戸新聞 1999年9月10日掲載

執筆者:大内 麻水美弁護士

亡くなった母親が、ある人の借金の連帯保証人になっていたことが分かりました。債務は遺族が引き継がねばならないのでしょうか。遺産の相続を放棄する方法もあるようですが・・・。

相談者:二カ月ほど前に母が亡くなったんですが、先日銀行からこんな通知が来まして…。

弁護士:ちょっと拝見させて下さい。なるほど、お母様はこの方の連帯保証人になられていたようですね。

相談者:そうなんです。母が連帯保証人になってるなんて全然知らなかったんで、びっくりしました。こんな会ったこともない人の借金を私が返さないといけないんでしょうか?

弁護士:お母様の遺産はどのくらいあるんですか?

相談者:預金通帳の残高が百万円くらいありましたが、他に財産といえるほどのものはないはずです。

弁護士:それでしたら、相続を放棄されたらいかがですか?そうすれば、お母様の保証債務も相続しなくて済みますよ。

相談者:相続放棄の手続はどうすればいいんでしょう?

弁護士:相続開始があったことを知ったときから三か月以内に、家庭裁判所に申述書を提出するんです。

相談者:申述書って?

弁護士:家庭裁判所に所定の用紙がありますから、それをもらって、必要事項を記入して出せばいいんです。

相談者:相続開始があったことを知ったときというのは、母が亡くなったときってことでしょうか?

弁護士:普通はそうなりますね。ただ、判例は遺産の存在をも認識したときから三か月としているようです。ですから、あなたの場合、銀行からの通知で相続債務があることを知ったときから三カ月ということになりますが、問題なく受理してもらうには、やはり死亡後三カ月以内に出しておいた方がいいでしょう。

相談者:ちょっと気になるのは、さっき話に出た預金なんですが、実は母の葬儀費用に使ってしまいまして…。それでも相続放棄できるんでしょうか?

弁護士:相続開始を知ってから相続人が相続財産を処分した場合は、単純承認したものとみなされます。でも、もともと、葬儀費用は相続財産で負担するものですから、葬儀費用に使ったからといって相続放棄には影響ありませんので、安心して下さい。

相談者:もう一つ大事なことを忘れてました。母の生命保険は私が受取人になってるんですが、相続放棄したら生命保険ももらえなくなるんじゃないでしょうか?

弁護士:それも大丈夫です。生命保険の保険金請求権は相続財産ではなくて、受取人であるあなた自身の財産ですから、相続放棄しても生命保険は受け取れますよ。

相談者:それを聞いて安心しました。さっそく相続放棄の手続をとることにします。