くらしの法律相談

1999年 神戸新聞掲載『くらしの法律相談』

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「別居中の生活費 費用負担の申し立てを」神戸新聞 1999年10月8日掲載

執筆者:中上 幹雄弁護士

夫が浮気相手と暮らし始め、まったく家族を顧みない、という相談です。残された妻は当座の生活費にも困る状態ですが、早急に救済できるてだてはあるのでしょうか。

相談者:夫が他の女性と懇ろになって同せい中で、全く生活費をくれないので困っています。

弁護士:法律的には、あなたは、ご主人に生活費を請求できるのですよ。

相談者:別居中で主人が他の女性と新生活に入っていても請求できるのですか。

弁護士:婚姻生活に必要な諸費用は夫婦が分担しなければならないという義務があり、この義務は婚姻が破たんしていても離婚しない限り、なくなりません。だから、別居状態にあっても婚姻費用の分担義務はなくならないのです。

相談者:婚姻生活に必要な諸経費用といわれても、よく分からないのですが・・・。

弁護士:端的に言えば、収入に応じた生活を維持するのに必要な費用ということで、収入相応の娯楽費や交際費なども含まれます。

相談者:では、私は生活にかかった費用を全額主人に請求すればいいんですね。

弁護士:ちょっと待って下さい。婚姻費用の分担の程度や額については、法律上も「一切の事情」を考慮して決定するとなってまして、裁判例でも個別の具体的な事情により、結論が異なるんですよ。

相談者:個別の具体的な事情というと?

弁護士:別居や婚姻関係の破たんの原因、両者の収入、子供の養育費用、内縁家族の生活費など、多数の事情を考慮して決定されます。

相談者:えっ。内縁家族の生活まで考えるんですか?

弁護士:お怒りはごもっともです。内縁家族の生活費を考慮すべきとした判例もありますが、おおむね、婚外不貞の責任が大きい場合には、その内縁は保護に値せずとする傾向にあるようです。

相談者:それを聞いて安心しました。でも、主人が実際に払ってくれない場合には、どうすればいいんですか。

弁護士:家庭裁判所に婚姻費用分担の調停か審判を申し立てられたらよいでしょう。

相談者:でも、どうせ長い時間がかかるんですよね。その間、生活できなくなってしまうのは困ります。

弁護士:そういう場合に備えて、審判前の保全処分という制度があります。取りあえず、結論が出るまで生活費を仮に支払えとの決定を出してもらえるように、家庭裁判所に申し立てをするとよいのです。

相談者:何か難しい話になってきましたね。

弁護士:そうですね。保全処分となると、一般の方では手続きも面倒ですので、ためらわずにお近くの弁護士に相談してみて下さい。