くらしの法律相談

1999年 神戸新聞掲載『くらしの法律相談』

<<1999年掲載一覧へ戻る

「同僚からのセクハラ はっきり「NO」と言おう」神戸新聞 1999年12月10日掲載

執筆者:今井 陽子弁護士

久々に会った友人のA子の顔色がさえません。聞けば、同僚の男性たちが職場で交わすわい談が、かなり苦痛になっている様子。こんな時、女性の側はどのように対処すればいいのでしょう。

弁護士:あら、A子。ひさしぶり。どうかしたの?何だか元気ないみたい。

A子:それが・・。職場の同僚の男性たちが昼休みとかに集まってわい談したり、ヌード写真集を見たりしながら、私にもいやらしいこと言ってくるの。それがたまらなく不快で、毎日仕事に行くのがいやになっちゃって、なんだか最近、身体の調子も優れないのよ。

弁護士:それは、れっきとしたセクシュアル・ハラスメント、いわゆるセクハラね。

A子:えっ。セクハラって、職場の上司とか社長からされるものをいうんじゃないの?

弁護士:いいえ。セクハラには、二種類あって、一つはあなたの言うような職場の上司とかが仕事上の権限や地位を利用して、性的要求を行う場合があるわ。これを「対価型セクシュアル・ハラスメント」と言うの。そして、もう一つは労働条件の変更とか経済的不利益には直接つながらなくても、性的な言動によって仕事が円滑に行えなくなったり、働きにくい職場環境を形成している場合。これが「環境型セクシュアル・ハラスメント」と言われるものね。まさにあなたのケースね。ところで、その同僚たちにはっきり「やめて」と言ったの?

A子:そんなこと言うと、職場のみんなにどう思われるか分からないし、職場に居づらくなりそうで・・。結局、何も言えないでいるの。

弁護士:うーん。あなたの気持ちも分かるけど、それではいつまでもセクハラが続くんじゃないかしら。セクハラを受けたときの対処の第一歩は、セクハラを行っている人に対して、はっきり「NO」と言うことよ。性的な言動等は女性にとっては非常に不快であっても、男性にとっては何でもないことやたわいないことだったりすることがあるわ。だからこそ、セクハラを受けた場合、はっきり「NO」と言うことで、こちらが不快に思っているということをセクハラの行為者にわからせてあげることが必要だし、悪意のない加害者の場合、その一言でセクハラがストップするということも十分あり得ると思うわ。

A子:分かったわ。勇気を出して言ってみる。でも、それでもセクハラがやまなかったら・・。

弁護士:そのときは会社の直属の上司や役員に相談してみるのがいいと思うわ。 それでもだめだったら、私の事務所にきてちょうだい。一緒に今後の方針を考えましょう。最終的にはセクハラの行為者やセクハラの事実を知りながら放置した会社に対して、法的責任を追求するということも考えられるわ。 最後に一つアドバイス。セクハラを含め、身の周りにトラブルが起こった場合、日時や場所、状況や経過をできるだけ具体的に記録に残しておくといいわよ。あなた自身にとっても気持ちを整理したり、今後の方針を決める材料になると思うし、相談を受けた側にとっては具体的な事実経過が分かった方が、より正しい判断ができるものね。仮に訴訟にまでなった場合は、記録が証拠になるわ。