くらしの法律相談

2000年 神戸新聞掲載『くらしの法律相談』

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「内縁の相続権-財産が認められることも」神戸新聞 2000年4月26日掲載

執筆者:坂井 希千与弁護士

長年連れ添った内縁の夫が亡くなりました。夫と前妻の間には子がいますが、夫名義の不動産を私が相続できるでしょうか。

相談者:半年前に、二十五年一緒に暮らした夫が亡くなりまして…。今日は、その相続の件でご相談したいのです。

弁護士:それは大変でしたね。お子さんは?

相談者:おりません。実は、夫は一度離婚しており、前妻との間に子供Bが一人おります。夫の親族は、そのBだけです。離婚後、私たちは二人で生活していましたが、入籍はしていません。

弁護士:内縁関係なんですね。

相談者:はい。二十年ほど前から、私たち二人は、レストランの経営をしてきました。しかし、実際の店の経営はほとんど私がやってきました。私たちは、一生懸命働いてお金を貯め、自宅のほかビルなど五つの不動産を購入しましたが、不動産の名義はすべて夫名義なのです。先生、これ全部私が相続できるんですよね。

弁護士:それだけ努力されて得た財産ですから、できれば相続したいですよね。しかし、残念ながら内縁の妻には相続権は認められていないのです。

相談者:エー、そんなー…。じゃあこれ全部Bのものなのですか。Bは、相続人は自分だけだから、店も自宅も全て自分のものだと言って私を追い出そうとしています。長年苦労してきたのに、突然会ったこともない子供が出てきて、こんなことってありますか…。

弁護士:たしかに、あなたのお気持ちはよく分かります。内縁関係は、実質的には婚姻と何ら変わらず、単に入籍していないとするだけですからね。そのため、実務上はできる限り婚姻に準ずる効果を与えようとする傾向にあります。たとえば、内縁関係を解消する際の財産分与、生活費などで借金ができた場合それを連帯して支払う日常家事債務の連帯責任など、婚姻に準じた効果が認められています。ただ、相続は画一的な処理が要求されており、内縁配偶者には認められていません。

相談者:そんな…。この年になって、全財産を失うなんて、どうすればいいのだろう…。

弁護士:そんなに悲観しないでください。あなたのようにご主人と協力してご商売をなさっていた場合には、その後に形成された財産は商売の収益をもって得たものですから、夫婦の共有財産であると認められる可能性があります。これらの財産を相続するのではなく、そもそもあなたの持分があるんだと認められる可能性があるのです。同じような事案で、内縁の妻に二分の一の持分が認められた裁判例もありますから、あなたも共有持分の主張をされたらどうですか。

相談者:はい、分かりました。そうしてみます。