くらしの法律相談

2000年 神戸新聞掲載『くらしの法律相談』

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「身元保証人の責任−経緯など考慮し軽減も」神戸新聞 2000年9月13日掲載

執筆者:内海 陽子弁護士

身元保証人になったおいが、勤務先で一千万円もの使い込みをしました。私が責任を負わないといけないのでしょうか。

Aさん:おいが就職するにあたり、身元保証人になりましたが、そのおいが、勤務先で一千万円もの多額の使い込みをしてしまいました。会社から身元保証責任として一千万円を支払うよう請求されています。全額支払わなければならないのでしょうか。

弁護士:必ずしもそんなことはありませんよ。身元保証人の責任が重すぎるものとならないように「身元保証に関する法律」は身元保証人の責任を制限しています。保証期間についても制限されていますが、おい御さんはいつ就職されたのですか。

Aさん:二年前です。

弁護士:身元保証は、期間が定められていなければ、存続期間は原則契約から三年間とされています。存続期間の定めがある場合も五年を越えることはできないんですよ。

Aさん:私の場合は、やはり責任を負わないといけないのですね。

弁護士:契約期間の点ではそうですね。ただ法律により身元保証人の責任が大幅に減額されることがあります。法律は、使用者の監督に過失があったかどうか、身元保証人が保証をした経緯、従業員の任務や身上の変化などを考慮し、身元保証人の責任を決めることとしています。
例えば、従業員がかなり長期間、使い込みしていたのに、会社がきちんと管理していなかったとか、雇って間もない従業員をいきなり重要な職務につけたなどの事情があれば、会社側の監督に過失があったと考えられます。
また、身元保証人と従業員とが単なる近所の知り合いだとか、あなたのように親せきがやむなく身元保証をしたという場合も、責任が軽くなります。

Aさん:私は、おいは一般事務職だと思っていたのです。でも、実際には入社直後から多額の現金を扱う経理の仕事をしており、そこで二年間使い込みを続けていたようなのです。

弁護士:そのような事情があれば会社の監督に過失があると考えられ、あなたの責任は大幅に減額される可能性がありますね。今までの裁判例からすると、責任は三割程度かそれ以下に減額される可能性もありますよ。

Aさん:そうですか。全額を支払わなくてよいと聞いて、ほっとしました。

弁護士:他にも、法律は、身元保証人の責任が重くなるときは使用者から身元保証人への通知を義務づけ、通知をしなかった場合は身元保証人からの解約を認めるなど、身元保証人の責任を軽減しているんですよ。