くらしの法律相談

2001年 神戸新聞掲載『くらしの法律相談』

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「債権の譲渡−債務者への通知が必要」神戸新聞 2001年1月10日掲載

執筆者:酒井 延子弁護士

債権を譲り受けたと言われました。その人物に支払わなければならないでしょうか。

Aさん:私は、友人のBさんから五十万円を借りているのですが、先日、Cと名乗る人物から「あなたへの貸金については、私がBから譲り受けたので、Bではなく私に支払ってもらいたい。」と請求を受けました。
でも、そもそもBさんが、私の承諾もなく、勝手にCさんに譲渡することなどできるのですか。

弁護士:貸金のような債権は、譲渡禁止の特約を定めない限り、他人に譲渡することができます。ですから、Bさんも、自由に、自分の権利を譲渡することができるのです。

Aさん:そうですか。それでは、私はCさんに払わなければならないのでしょうか。

弁護士:民法では、債権譲渡があったことを債務者(借主)に対抗するには、譲渡人の通知または債務者の承諾が必要と定めています。Bさんからあなたに、Cさんへ債権譲渡をしたとの通知はありましたか。

Aさん:いいえ、ありません。今回のようにCさんから通知を受けただけでは、さっきおっしゃた通知とはならないのですか。

弁護士:なりません。債権譲渡の通知は、譲渡人から債務者に対してしなければなりません。譲受人からの通知でもよいとすると、譲渡が実際には行われていないにもかかわらず、譲受人と名乗って通知してくることもあるからです。
ですから、譲渡人であるBさんから通知がない以上、Cさんには支払う必要はありません。

Aさん:でも、先ほどのお話ですと、私がCさんへの譲渡を承諾して、支払うことは問題ないということになりますよね。

弁護士:確かに、債務者であるあなたの承諾も債権譲渡の対抗要件になることはその通りです。しかし、BさんとCさんとの間に実際に債権の譲渡が行われていない場合には、あなたが承諾しても債権が譲渡されたことにはならず、債権者はBさんのままなのです。
ですから、あなたが承諾をした上でCさんに支払うとしても、債権の譲渡が実際に行われたか否かを十分に確認することが必要です。譲受人であるBさんには連絡をとって確認されましたか。

Aさん:Cさんからの請求を受けた後、Bさんに連絡をとろうとしましたが、行方不明で連絡がとれず、Cさんへの債権譲渡が行われたかどうか確認できていません。

弁護士:そうですか。そのような状況では、支払うのは危険ですね。債権の支払いは、あくまで真の権利者に対してなされない限り有効とならないのが原則ですから。

Aさん:分かりました。