くらしの法律相談

2001年 神戸新聞掲載『くらしの法律相談』

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「納入商品の引き揚げ−債権の回収は競売代金から」神戸新聞 2001年7月4日掲載

執筆者:林 亜衣子弁護士

酒屋を経営しているのですが、取引先の料理店が倒産し、社長が夜逃げしました。清酒10ダースの代金をまだ支払ってもらっていなかったので、料理店に行ってみると、納入した商品がそのまま置いてありました。商品だけでも引き揚げようと思ったのですが、従業員から「『店の持ち物を動かしてはいけない』と社長から指示されている」と言われて引き揚げられず、納得できません。

相談者:まだこの商品は私の物といえるんじゃないんですか。

弁護士:それは違います。いったん売って渡してしまった以上、代金をもらっていなくても、その商品の所有権はあなたにはありません。

相談者:とすると、勝手に持って帰ってきたら泥棒になるのですか。

弁護士:そうです。違法行為です。

相談者:じゃあ、私は泣き寝入りするしかないんですか。

弁護士:そうとは言ってませんよ。あなたは料理店に対して売買代金債権を持っていることになります。そして、おうかがいした事情によると、売った商品がまだ買主である料理店に残っているということですから、あなたには自分が納入した商品に対して、民法上の動産先取特権(民法311条6号)という権利が認められます。

相談者:それは、商品を持って帰っていいという権利ではないんですか。

弁護士:残念ながら、そうじゃないんですよ。動産先取特権というのは、その動産の競売代金の中から優先的に債権回収を図れるという特別の権利なのです。ですから、あなたはしかるべき法的手続きを経れば、優先的に売買代金を回収することができます。