くらしの法律相談

2001年 神戸新聞掲載『くらしの法律相談』

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「相続の限定承認−財産目録は記載漏れに注意」神戸新聞 2001年12月18日掲載

執筆者:竹内 文造弁護士

三人兄妹の長女ですが、先日父が亡くなりました。ところが、父が生前2000万円以上もの借金をしていたことが分かり、残された私たち兄妹と母は途方に暮れています。どうしたらよいでしょうか。

弁護士:お父さんは何か財産は残していますか。

相談者:はい。土地建物のほか、若干の預金などが残っています。ただ、それらをすべて換金したとしても借金の返済に充てることができるかどうかはわかりません。

弁護士:お父さんの土地建物などのプラス財産よりも、借金つまりマイナス財産の方が多いのなら、「相続放棄」するのがよいでしょう。しかし、どちらかはっきりしない場合には、「限定承認」がよいと思います。これは、相続人が、相続によって取得したプラス財産の範囲内でのみ、マイナス財産、つまり借金を弁済することを留保して承認するための手続を言います。

相談者:限定承認するには、どうしたらよいのですか。

弁護士:まず、お父さんが死亡したことを知ってから三カ月以内に、お父さんの財産目録を作成した上で、家庭裁判所に限定承認の申述をすることが必要です。これがなされると、家庭裁判所が、相続人の中から適当な人を相続財産管理人として選任し、その人が相続人全員に代わって相続財産の管理と清算にあたることになります。

相談者:ところで、兄は、先祖から代々受け継いだ土地を手放すことに反対で、「単純承認」して借金を返済していく覚悟でいます。そのような場合でも、他の兄妹だけで限定承認することはできるのですか。

弁護士:できません。限定承認は、相続人全員がそろってしなければならないことになっています。従って、あなたがあくまで借金の負担を免れたいのならば、相続放棄の申述をするしかないでしょう。

相談者:分かりました。最後に、父の財産目録を作成する際の注意点について教えて下さい。

弁護士:財産目録には、お父さんのプラスの財産はもとより、マイナスの財産についても、できるだけ正確に記載するよう努めなければなりません。あなたが故意に記載漏れをした場合には、単純承認をしたものとみなされてしまう場合もありますので、注意が必要です。また、どうしても三カ月以内に財産目録を作成することができない場合には、家庭裁判所にこの期間の伸長を請求することもできます。