くらしの法律相談

2002年 神戸新聞掲載『くらしの法律相談』

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「家賃の一方的な値上げ−調停手続き後、裁判で確定」神戸新聞 2002年1月15日掲載

執筆者:児嶋 香里弁護士

現在、借家に住んでいますが、先日、家主から「賃料を現在の15万円から17万円に引き上げたい」という一方的な内容の手紙が送られてきました。賃貸借契約書には値上げについて何も書かれていません。そんなことが許されるのですか?

弁護士:家主の方から賃料の値上げを請求することも可能です。

相談者:一方的に値上げを請求できるのですか?

弁護士:もちろん、賃料の交渉は、当事者の話し合いで改定されていくのが普通でしょうね。ただ、そうでない時でも、借地借家法32条によって、一定の場合、当事者双方に、将来に向けて、一方的に賃料の増減を請求する権利が認められているのです。

相談者:一定の場合とはどういう場合を指すのですか?

弁護士:建物の賃料が(1)土地や建物に対する税金などの負担の増減により(2)土地や建物の価格の上昇もしくは低下その他の経済事情の変動により、または(3)近隣の同種の建物の賃料と比較して、不相当となった場合です。本件の場合は(2)の「その他の経済事情の変動」に当たるのでしょうね。

相談者:そうですか。では、私は家主の要求に応じるしかないのですね。十五万円ならまだしも、十七万円というのは高すぎると思いますが…。

弁護士:いいえ。今の段階で、必ず値上げに応じなければならないということはありません。あなたが十七万円が高すぎると思うのでしたら、この賃料の値上げを正当とする裁判が確定するまでは、あなたが相当と認める賃料を支払えばいいのです。

相談者:家を追い出されることにはなりませんか。

弁護士:賃料不払いによって、賃貸借契約を解除されないために、相当額の賃料を支払うのです。そして、十七万円の賃料を正当とする裁判が確定した場合、不足額に年一割の利息を付けて支払えば、そのまま居住することができます。

相談者:では、家主は私に対して裁判をするのですね。

弁護士:調停手続きでの話し合いを経た上でなければ、裁判にはなりません。

相談者:私が相当と思う賃料を支払おうとしても家主は受け取らないかもしれません。

弁護士:その場合は法務局に行って賃料を供託するという手続きをとれば問題はありません。