くらしの法律相談

2002年 神戸新聞掲載『くらしの法律相談』

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「隣の塀の崩れ−『妨害予防請求権』で措置を」神戸新聞 2002年6月18日掲載

執筆者:籔内 正樹弁護士

隣家の塀が、いまにも崩れてきそうで、危険です。隣人に、どのような対処を求めることができますか。

弁護士:あなたも隣人も、土地建物を所有しているのですか。

相談者:はい。隣人が所有する土地の上に作った塀が、私の土地の上に崩れてきそうなんです。危なく、困っています。

弁護士:実際に塀が崩れてきてあなたの土地に塀の残がいができてしまうと、あなたの土地所有権の行使が理由なく妨害されていることになります。そこで、私の土地を正常に使えないので塀の残がいをのけてほしい、と相手方に請求できます。これを所有権に基づく「妨害排除請求権」と言います。民法には規定がありませんが、所有権を保護するために当然認められる権利とされています。

相談者:崩れる前には、何か請求できないのですか?

弁護士:先ほどいいました土地所有権の侵害の恐れがある場合には、塀が崩れると私の土地の正常な使用ができないので、塀の崩れを防止するための措置を講じるよう、相手方に請求できます。これを所有権に基づく「妨害予防請求権」と言います。

相談者:崩れる前に言えるのですね。

弁護士:はい。ただし、所有権の妨害が生じる恐れが相当程度高いことが必要です。

相談者:隣人に言っても対処してくれないときには、どうすればいいでしょうか。

弁護士:まずは裁判所と調停委員に間に入ってもらって、当事者で話し合いをする手続きである調停を行うのがよいかと思います。

相談者:話し合いがまとまらない場合は?

弁護士:裁判ということになりますね。

相談者:工事費用についてはどうなりますか。

弁護士:妨害予防請求権は、相手方に一定の行為を要求するものなので、原則として相手方負担であるといえます。ただ、生じた危険が自然力によるものであり、予防工事が双方にとって利益になるときなどには、一部の費用負担を命じられる場合がありえます。裁判例の中にも事例は異なりますが、このような考え方を示すものがあります。

相談者:そうですか。

弁護士:それから、この妨害予防請求権は土地の所有者だけではなく、借地権者の場合でも同様に認められます。