くらしの法律相談

2003年 神戸新聞掲載『くらしの法律相談』

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「一方的な婚約解消−結納金や損害賠償の請求可能」神戸新聞 2003年5月20日掲載

執筆者:木花 裕弁護士

長年つき合った彼女と婚約し、結納も済ませました。その後、彼女が迷っているとは感じていましたが、「別の男と別れられないので婚約を解消してほしい」と言われました。許せない気持ちです。婚約解消に応じなければならないのでしょうか。仮に応じたとして、結納金は返してもらえますか。

弁護士:そもそも婚約とは、男女間で将来夫婦になろうという真正かつ確定的な合意をいうのですが、あなたたち二人の間で、このような合意があったわけですね。

相談者:はい。お互い心から将来夫婦になろうと誓い合い、結納も済ませたのです。

弁護士:それなら、婚約は成立していますね。

相談者:それに私は未成年者でもありません。

弁護士:いや未成年者であっても、意思能力を有する限り、親の同意がなくても完全に有効な婚約を結ぶことができます。実際には、あなたたちのように当事者間に結納の授受や指輪の交換、その他慣習上の儀式を伴うことが多いのですが、男女間の合意だけでも婚約は成立するのです。

相談者:そうだったんですか。

弁護士:いずれにしても、あなたのケースは婚約が成立しているので、婚約者は誠実に交際し、婚姻を成立させる義務を相互に負うことになります。

相談者:じゃあ、彼女から婚約解消の申し出を受けても、応じたくない私としては婚約解消をしなくて済むのですね。

弁護士:気持ちは分かりますが、婚姻を成立させる義務を相互に負うとはいっても、法的強制にはなじまないので、結果的には彼女からの一方的な婚約解消も認めざるを得ないでしょう。
ただ、彼女は別の男性と別れられないためにあなたとの婚約を解消したいということですから、一般的には正当な理由もなく義務を果たさなかったと思われますので、あなたが彼女に損害賠償を請求することは可能でしょう。

相談者:結納金は返してもらえますか。

弁護士:結納とは、婚姻の成立を目的になされる一種の贈与としての法的性質を有します。従って、婚姻が不成立に終わったときは目的は達せられていないので、贈ったあなたは受け取った彼女に対し、その返還を請求できます。