くらしの法律相談

2003年 神戸新聞掲載『くらしの法律相談』

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「定期行為−売買契約解除し支払い拒否」神戸新聞 2003年8月19日掲載

執筆者:芳田 栄二弁護士

娘の誕生日に注文したバースデーケーキが、1週間遅れで届けられ、代金を請求されています。誕生日には別の既製品のケーキを急きょ購入して間に合わせざるを得なかったので、今更こんなものを届けられてもとてもじゃありませんが、支払えません。支払いを拒否できますか。

弁護士:この場合、ケーキを後で届けられても、売買契約を解除により消滅させた上で、代金の支払いを拒むことができますよ。

相談者:注文した品物が届いたのが期限後なら、どんな場合でも売買契約を解除して、代金の支払いを拒むことができるのですか。

弁護士:いえ、契約内容にかかわらず当然に解除ができるわけではありません。債務者の落ち度など、他にも必要な事情はありますが、この場合は履行の催告が問題になります。履行の催告とは、売買をしたのにまだ受け取っていない品物や代金をこちらに渡せという請求のことです。
注文した品物が期限を過ぎて届かない場合でも、履行の催告をしないと解除することはできません。催告をしないうちに品物が届けば、代金を支払わなければいけないのです。本来、解除をするためには、履行をしようとしない債務者に対して請求をして、心を変えて履行をする最後のチャンスを与えないとだめだということです。

相談者:では、このケーキの場合は、なぜ解除ができるのですか。

弁護士:民法でいう「定期行為」にあたり、催告が不要とされているからです。定期行為とは、契約の性質または当事者の意思表示によって一定の日時や期間内に履行しなければ、契約した目的を達することのできないものをいいます。バースデーケーキの売買もそれにあたるわけです。

相談者:他にどのようなものがあるのですか。

弁護士:中元用のうちわを中元期直前に届けてもらう売買契約もそれにあたるでしょうね。特定の時期に届けてもらわないと、買った人にとっては意味がないわけです。
このように、契約の客観的性質から定期行為とされるもの(絶対的定期行為)以外でも、債権者の主観的な動機からして、期間内に履行されなければ契約した目的を達成できないもの(相対的定期行為)も定期行為とされます。春に料理屋を開くために、その時期までに引き渡すことを目的とする家屋の売買などです。ただ相対的定期行為として解除するためには、少なくとも契約目的が相手に表示されている必要があるでしょうね。