くらしの法律相談

2004年 神戸新聞掲載『くらしの法律相談』

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「家庭教師代−義務果たせば合否無関係」神戸新聞 2004年5月18日掲載

執筆者:吉田 真理弁護士

Q:昨年4月から今年の3月まで高校生の家庭教師として大学受験の指導をしていました。教え子が入試に失敗したため、ご両親から3月分の家庭教師代の支払いを拒否されています。合格しなかった以上、払ってもらえないのでしょうか。

A:教え子が大学入試に失敗した場合、あなたが家庭教師代を支払ってもらえるのかどうかは、あなたが教え子を大学に合格させる義務まで負っていたかどうかによって決まります。

家庭教師をする場合、法律的にみると、家庭教師と教え子(あるいは両親)との間に、一定の契約が結ばれることになります。この契約によって、家庭教師がどこまでの義務を負うか、必ず「合格」という結果を出さなくてはならないのか、考える必要があります。

例えば、患者と医者の関係を考えてみます。医者は、病気治癒のため適切な診療をする義務がありますが、できる限り手を尽くしても病気が治癒しなかった場合、医者の義務違反になるかというと、必ずしもそうではないのです。
このように契約当事者が、ある一定の事務を行ったり、役務を提供する義務を負うものの結果を出すことまで要求されない場合があるのです。

家庭教師についても、一般的な家庭教師を念頭に置いた場合、受験指導をすること(役務の提供)が家庭教師の契約上の義務であり、教え子を大学に合格させること(結果を出すこと)までは契約上の義務に含まれないと判断される場合が多いと思われます。ただし、合格させることを条件に家庭教師をすることになったなどの事情があれば、異なる判断がなされる可能性はあります。

従って、ご質問のケースでも、あなたが受験指導するという義務をきちんと果たしていたならば、教え子が入試に失敗したとしても、3月分の家庭教師代を払ってもらえる可能性が高いと思われます。