くらしの法律相談

2004年 神戸新聞掲載『くらしの法律相談』

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「壊されたパソコン−データ消し、賠償請求を」神戸新聞 2004年6月29日掲載

執筆者:西片 和代弁護士

Q:マンション上階からの水漏れ事故で、パソコンが壊れました。相手は、「パソコン代金は全額弁償するから、パソコンを引き渡せ」と言います。弁償はしてもらいたいのですが、データを勝手に取り出されるのが心配です。パソコンの引き渡しは拒否できませんか。

A:まず、相手の不注意な行為(水漏れ事故はこれにあたると思われます)によってパソコンを壊される被害にあった以上、被害を受けた分については相手に損害賠償をしてもらえます。

では、全額を弁償してもらった場合、代わりにパソコンを相手に引き渡さなければいけないのでしょうか?

相手がパソコンを引き渡せと言っている根拠は、損害賠償として物(パソコン)の価額全部を支払った人に、その物(パソコン)の所有権を取得させる、という民法の規定(「賠償者代位」といいます)に基づくものと思われます。損害賠償を受ける人が、パソコンの価額全部にあたるお金をもらった上に、パソコン自体もそのまま手元に置いておけるとすると、利益の二重取りになってしまい公平でない、と考えられるからです。

以上の民法の原則を徹底すれば、代金の弁償を受ける代わりに、パソコンを相手に引き渡さなければいけないことになります。

しかしパソコンには個人的に重要なデータが残っていますから、パソコンが壊れたといってもまだこのデータを取り出せる状態にあるなら、相談者のおっしゃるような心配がでてきます。実際、中古パソコンからデータが他人に漏れたという事件も、最近報道されています。

データを完全に消去する方法については、専用のソフトも発売されているようですから、これを利用する方法もあるでしょう。しかし私なら、金づちか何かでパソコンを物理的に完全に破壊してしまいます。これが一番簡単で、確実です。こうして壊れてしまったパソコンを相手に渡しても、法律的に何ら問題はありません。