くらしの法律相談

2004年 神戸新聞掲載『くらしの法律相談』

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「商品先物取引−不適格者への勧誘を禁止」神戸新聞 2004年10月19日掲載

執筆者:山根 良一弁護士

Q:実家の父親が金やゴムの商品先物取引で、退職金をためた2000万円ほどの貯金を失ってしまいました。父は定年まで教師をして、もうすぐ70歳です。相場のことを自分で判断できるはずはないのに、こんな取引をさせた業者に責任はないのでしょうか?

A:商品先物取引は大変にリスクの高い取引です。証拠金を払ってその何十倍もの商品を売り買いする仕組みですが、実際は買いで始めた場合には売りで、売りで始めた場合は買いで取引を終了させ、値段の差で損益が発生します。さらに高額な手数料や消費税が必要なので、顧客全体を平均すると必ず損になり、監督官庁の報告書では、調査時点で客の八割が損という指摘があります。

損になると、次々に証拠金の追加を請求され、取引回数や量が増えて、短期間で何百万、何千万円の損になることがあります。取引の量を増やして売り買いを頻繁にさせないと、業者に利益が出ない構造になっているというのは、監督官庁の調査でも指摘されています。

最近は、同様の危険性を持つ外国為替証拠金取引や、海外商品などのオプション取引など、素人には理解できるはずのない取引による被害も増えています。

このようなリスクの高い投機的取引の場合、不適格者の勧誘禁止は裁判例も認めており、その人の知識や資金の性質、取引の危険性などから判断されますが、ここに挙げたものは最も危険なものと考えていいでしょう。お父さんに相場の判断ができるとは思えませんし、貯金は老後の生活資金でしょうから、損害賠償が認められるケースだと考えられます。

不適格者でなくても、もうかると言って勧誘したことで判断を誤らせたとか、頻繁過大な取引を防止する義務を怠ったなどの理由でも損害賠償が認められます。

先物取引の事件については、弁護士有志の研究会が神戸(http://www5f.biglobe.ne.jp/~sqkobe)や、姫路にあります。弁護士会には弁護士紹介の制度もあるので相談してみてください。