くらしの法律相談

2005年 神戸新聞掲載『くらしの法律相談』

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「食品の『偽装表示』−監督官庁に実態通告を」神戸新聞 2005年5月3日掲載

執筆者:上入佐 輝史弁護士

Q:私はある小売店にパートとして勤務しています。先日、段ボール箱に「○○県産」とある食品を陳列する際、「△△県産」と書いた値札シールを張るよう上司に指示されました。偽装表示と思うのですが、指示に従わないわけにもいきません。どうすればよいでしょうか。

A:まず、本当に「偽装表示」にあたるかどうかを確認することが必要です。
JAS法(農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律)は、食品の販売業者に対して、食品の「名称」や「原産地」を表示するように義務付けています。しかし、「原産地」の意味は一義的ではありません。

基本的には、産地が「原産地」となるのですが、畜産品では、生体で輸入されて一定期間(牛なら三カ月)、国内で飼育したものは、国産と表示できますし、水産物についても、生産水域だけでなく、水揚げした港がある都道府県も「原産地」とすることができます。

このように、一見表示を偽っているように見えても、「偽装表示」に当たらない場合があるので、よく確認してください。

次に、本当に「偽装表示」だった場合の対処の仕方ですが、自分で会社に忠告しても、改善される可能性は低いでしょう。やはり、監督官庁に通告し、会社に対して改善を指導してもらうのが一番です。JAS法の監督官庁は農林水産省ですから、農林水産消費技術センターの神戸センターか、兵庫農政事務所に相談してください。

仮にあなたが通告したことが会社に発覚し、それを理由に会社があなたを解雇しようとしても、労働基準法で禁止されている「合理的理由のない解雇」に当たりますから、認められません。

2004年6月に成立し、少なくとも06年には発効することになる公益通報者保護法では、偽装表示などの通報者を保護する趣旨が定められています。会社自体も協力して、偽装表示をなくさねばならない、というのが社会の流れといえるでしょう。