くらしの法律相談

2006年 神戸新聞掲載『くらしの法律相談』

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「土地の名義変更書類−遺産分割協議か遺言の可能性」神戸新聞 2006年2月7日掲載

執筆者:林 文敏弁護士

Q:父が亡くなって10年、母は父より先に他界しました。きょうだいは兄と妹で、兄とは疎遠だったのですが、突然兄から、父名義の土地について名義を兄に変えるために実印を押してほしいと、書類が送られてきました。どういう書類か不明で、私は実印を押さなければならないのですか。

A:法律とは無縁と思っていても、人生、相続だけは避けて通れません。身内同士だからと安心していると・・・。

さて本題です。相続人の一人であったお母さんがすでに他界されているので、お父さんの財産は、特別な事情がなければあなたとお兄さんと妹さんとが3分の1ずつ相続することになるはずです(法定相続による相続)。今回は、お父さんの土地をお兄さん一人の名義に変更するというお話ですから少なくとも法定相続の場合ではないようです。

よくある話として、あなたと妹さんに相続放棄を求めているのかもしれません。お二人が相続を放棄すれば、お兄さんは単独でお父様の土地を相続できるからです。ところが、相続の放棄は原則としてお父さんが亡くなったことを知ってから3ヶ月以内に手続きをしなければなりません。10年も経っているので、相続放棄の場合でもないようです。

そうすると、考えられるのは、相続人同士で遺産分割協議をする場合と、遺言による場合です。

遺産分割協議による場合、相続登記には相続人全員による遺産分割協議書が必要です。今回は遺産分割協議書への押印が要求されている可能性があります。分割内容は、相続人同士で自由に決定できますので、あなたに不当に不利な分割内容になっていないか十分に確認する必要があります。

遺言による場合、相続登記手続きにあなたの実印が必要なときがあります。したがって、今回はその申請書類への押印を要求されていることも考えられます。一口に遺言と言っても、公証人役場で作ったもの、手書きのもの、などさまざまなものがあり、遺言の内容は明確か、方式に従っているかなど、気をつけなければならないポイントがいくつかあります。

今回は、疎遠な兄が突然書類を送りつけてきています。なにかあやしいですね。

遺産分割協議書又は遺言書を持って、まず弁護士に相談して下さい。