くらしの法律相談

2006年 神戸新聞掲載『くらしの法律相談』

<<2006年掲載一覧へ戻る

「障害理由に入園拒否−「仮の義務付け」申し立てを」神戸新聞 2006年4月4日掲載

執筆者:瀬合 彩子弁護士

Q:もうすぐ5歳になる私の子どもは障害のため足が不自由で歩行に支障があります。今回、公立の幼稚園に入園する手続きをしたところ、幼稚園から、障害がある子どもを受け入れる体制がないなどという理由で入園を拒否されました。これに対し不服を申し立てるにはどうすればよいですか。

A:この公立幼稚園からの入園拒否に対し、あなたが不服を申し立てるには、その公立幼稚園のある市町村を相手として、子どもの入園を認めることを義務付ける訴え(義務付け訴訟)を裁判所に提起することが考えられます。

もっとも、この義務付け訴訟だけでは、裁判に長期間費やした結果、入園を認めることを命じる判決が出るころには、すでにお子さんが幼稚園に通園する年齢でなくなっていたということになりかねません。

そこでどのような手段をとるのがよいかといいますと、この義務付け訴訟とともに、子どもの入園を仮に認めることを命じる「仮の義務付け」の申し立てを裁判所に行うのです。

この仮の義務付けの申し立てについては、簡易で迅速な手続によって比較的早期に裁判所の決定がなされますので、この申し立てが認められれば、あなたのお子さんは、仮とはいえ、すぐに幼稚園に通園できるようになります。つまり、結果的に幼稚園への入園が認められたこととと同じになるのです。

従来の行政事件訴訟法では、このような一定の行政処分(入園許可)をすることを仮に義務付けるような救済手段は認められていなかったのですが、2005年4月1日から施行されている同法の改正法によって、このような仮の救済手段が認められるようになりました。

幼稚園における教育は、子どもの心身の成長や発達にとって重要な教育です。今回のケースのように、子どもの足が不自由で歩行に支障があっても、幼稚園としては教職員を増員して子どもの移動介助に当たるなどして、これに対応することが十分に可能であると考えられます。従って、障害のある子どもを受け入れる体制がないという理由で入園を拒否することは、市町村長の裁量権の濫用といえるでしょう。05年6月に徳島地裁で、また最近では今年1月に東京地裁で、仮の義務付けにより入園を認める決定がなされおり、この新しい制度が活用されて います。