くらしの法律相談

2006年 神戸新聞掲載『くらしの法律相談』

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「眺望権の侵害−損害賠償請求の検討を」神戸新聞 2006年4月18日掲載

執筆者:中尾 悦子弁護士

Q:海の眺望が抜群という宣伝文句にひかれ、マンションの高層階の一部屋を購入しました。しかし後日、私の部屋の目の前に別のマンションの建設計画があることが判明。これが建つと部屋から海が見えなくなってしまいます。誰にどのような責任を追求することができますか。

A:あなたとしては、まず、美しい景色を眺めて楽しむ利益(「眺望権」と言います)が侵害されたとして、売り主や販売業者に対して、説明義務違反もしくは保証特約違反に基づく損害賠償請求をすることができます。

売り主や販売業者には、売買の目的物に関し十分な説明をする義務がありますし、また眺望を保証した場合には、その眺望を保持する義務があるからです。

ただ、この請求が認められるためには、(1)眺望が契約の重要な要素であって相手もそれを認識している、(2)眺望を保証するような明確な記録がある(パンフレットの記載など)、(3)実際の眺望との乖離(かいり)が大きい−というような事情が必要です。また、売り主や販売業者が、目の前のマンションの施工主である場合には、損害賠償請求が認められやすくなります。

さらに、前記の(1)から(3)の事情の程度が大きく、眺望が売り主や販売業者との間でマンション購入の条件とされていたなどの事情がある場合には、契約の解除や無効を主張して、マンションの売買契約を白紙に戻すこともできるでしょう。

また、良好な景観の形成・促進を目的とする法律として、2004年6月18日、「景観法」が制定されました。あなたの町が景観地区に指定されている地域などであれば、景観法の趣旨により、目の前のマンションの施工主に対する建築の差し止めが認められやすくなりますし、それ以外の場合でも、施工主に害意があるなどの事情があれば、建築の差し止めが認められる場合があります。請求が裁判上確定する前であっても、裁判所の決定により、取り急ぎ一時的に建築工事を禁止をすることもできますので(「建築等禁止の仮処分」と言います)、早急に専門家に相談されることをお勧めします。