くらしの法律相談

2006年 神戸新聞掲載『くらしの法律相談』

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「父名義地に購入希望−財産管理人を選任し協議を」神戸新聞 2006年5月2日掲載

執筆者:松谷 卓也弁護士

Q:父が私と兄を残し死亡しました。父名義の土地が残りましたが、遺言はなく、相続に関する手続きは特に何もしませんでした。最近、この土地を買いたいという人が現れたのですが、私の兄は家を出たまま行方不明になってしまい、連絡がとれません。私の一存で土地を売ってしまうことはできますか。

A:まず、あなたのケースでは、あなたとお兄さんがお父さんの相続人となります。そして、相続が開始した場合(お父さんが死亡した場合)、お父さんの遺言が無ければ、あなたとお兄さんの間でお父さんが残した財産の分け方を話し合う必要があります(このことを「遺産分割協議」といいます)。

そのような話し合いが行われる前であれば、お父さん名義の土地は基本的に法律上あなたとお兄さんの共有となり、土地に対する権利の半分はお兄さんにあることになります。

そして、土地を売るという行為は、土地を使えなくなるという重要な結果をもたらしますので、お兄さんの同意がなければ、原則として共有者であるあなたの一存で売ることはできないのです。

結局、あなたが土地を売るためにはお兄さんと話し合う必要があるわけですが、今回のあなたのケースでは、お兄さんが行方不明のため、お兄さんと話し合いを行うことはできません。

そこで、あなたが取りうる手段ですが、家庭裁判所にお兄さんの財産管理人を選任するよう求めることができます。そして、お兄さんの財産管理人が選任されれば、この財産管理人との間で土地をあなたのものにするという話し合い(遺産分割協議)を行い、土地を売ることができます。

なお、財産管理人は、家庭裁判所の許可を得なければ、土地をあなた一人のものにすることについて同意することはできませんが、例えば、土地の売却代金の半分をお兄さんのものにする等、お兄さんの相続分を実質的に害さないような措置を取れば、許可は出やすくなるでしょう。

今回のケースで、仮にあなたの一存で土地を売ってしまい、後日になってお兄さんが現れ、土地を売ったことについて承認が得られなかった場合、様々な紛争が生じる可能性があります。相続の問題は、親族間の感情も絡みうるデリケートな問題ですから、できるだけ公正な手続きを踏み、公平に遺産を分け合い、後日になって紛争が生じないようにしておきましょう。