くらしの法律相談

2006年 神戸新聞掲載『くらしの法律相談』

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「内縁関係者の相続−相続人いない場合、可能性も」神戸新聞 2006年12月5日掲載

執筆者:福間 則博弁護士

Q:Aという男性と20年間、婚姻届は出していませんが、事実上の夫婦として暮らしてきました。このほどAが死亡。Aは預貯金500万円を持っていましたが、子どもや兄弟はなく、両親や祖父母も既に亡くなっています。Aの預貯金をもらうことはできないのでしょうか。

A:Aの財産については、Aが生前に遺言を作成していた場合は、遺言に従って処理されます。

Aが遺言を作成していなかったときは、民法に従って処理されます。民法は、相続人の範囲を、(1)亡くなった人に子がいるときは、配偶者と子(2)子がいないときは、配偶者と直系尊属(3)直系尊属がいないときは、配偶者と兄弟姉妹、としています。このように配偶者は、常に相続人になるのですが、ここに「配偶者」とは、婚姻届を提出していた人を意味し、事実上の内縁関係にあった人を含みません。従って、この相談者に相続権は認められません。Aには、子、直系尊属、兄弟姉妹はいないのですから、結局、相続人はいないこととなります。

しかし、20年にわたってAと生活を共にし、実質的に夫婦同然の生活をしてきたのに、まったく財産を取得させないというのも不合理です。そこで、民法は、相続人がいないケースで、死亡した人と生計を同一にしていた、亡くなった人の療養看護に努めた、そのほか特別の縁故があった、という人は、相続財産の全部あるいは一部の分与を受けることができるものとしています(民法第958条3項)。

このような立場の人を「特別縁故者」といいます。特別縁故者が相続財産の分与を受けるためには、相続財産管理人が選任されていることがまず前提になります。そして、相続財産管理人による相続人捜索の公告期間中に相続権を主張する人物がいなければ、公告期間満了後3ヶ月以内に家庭裁判所に相続財産の分与を求める申し立てをする必要があります。

今回の相談者は、特別縁故者として預貯金500万円の全部か一部を受け取ることができる可能性も十分残されています。