くらしの法律相談

2007年 神戸新聞掲載『くらしの法律相談』

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「消息不明の夫との離婚−事情が該当すれば可能」神戸新聞 2007年1月16日掲載

執筆者:木村 倫太郎弁護士

Q:結婚して20年になりますが、夫は10年前に私たち家族を置いて出て行ったきりです。どこにいるのかも分からず、生活費もまったくもらっていない状態です。夫と離婚をしたいのですが、このような状態でも方法があるのでしょうか。

A:結論として離婚は可能です。離婚には、当事者の合意による協議離婚と裁判上の離婚がありますが、ここでは裁判上の離婚を選択します。

裁判上の離婚は、離婚の原因となる事情が法律で決まっており(民法770条1項各号)、そのいずれかに該当しなければなりません。

夫は家に戻らず生活費も支払われていないので、同条項2号「悪意の遺棄」に当たりますし、最後に消息のあった時から3年以上「生死」すら不明ならば3号「3年以上の生死不明」にも該当するでしょう。いずれの事情でも離婚が認められる可能性が高いといえます。

裁判上の離婚の具体的な手続きとしては、まず家庭裁判所で「調停」という話し合いの手続きを先行させなければならないのが原則ですが(家事審判法18条 1項)、ここでは夫が行方不明ですから、例外的に、家庭裁判所に離婚請求訴訟を提起できるとするのが一般的です(同条2項参照)。

そこで、あなたの現在の住所地、もしくは分かる範囲で夫の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ離婚請求訴訟を提起します。その後、本来であれば、裁判所から特別送達という特殊な郵便で相手方に訴状を送るのですが、夫は住所不明ですから、送達ができません。

そこで、裁判所書記官に公示送達という方法を用いてもらうよう申し立てをします。これは、書記官が裁判所内の掲示場に、相手方に訴状が出された旨の掲示をして、2週間が経過した時点で送達されたとされるものです(民事訴訟法110条〜112条)。

公示送達をしてもらうためには、夫が行方不明であることをきちんと立証しなければなりません。通常、夫の職場、友人宅、親類関係など立ち寄りそうな場所を全て調べても不明であったことの報告書や、住民票、近隣住民からの聴取報告書、返送された郵便物などを添付します。

以上のような手続きを踏めば、あとは裁判所が主張を判断します。