くらしの法律相談

2007年 神戸新聞掲載『くらしの法律相談』

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「会社経営の交代−所有株式譲渡などの方法あり」神戸新聞 2007年2月20日掲載

執筆者:吉原 清英弁護士

Q:従業員が10人程度の株式会社を経営していますが、もうすぐ70歳となり、今後の会社経営に体力的な不安を感じています。私の子供たち、あるいは第3者に経営を代わってほしいと考えていますが、どのような方法があるのでしょうか。

A:経営を交代する方法として、(1)取締役(代表取締役)の交代、(2)事業の全部の譲渡、(3)所有する株式の譲渡−、などが考えられます。(1)は、経営者が取締役を辞任し、新たな取締役を選任することによって行います。

この会社は、従業員が10人程度の中小企業ですから、総株主の議決権の過半数を相談者が所有していると考えられます。この場合、所有する議決権を行使して、経営を交代してくれる人を新たな取締役として選任すればよいのです。この方法では、相談者は、経営していた会社の株式を保有し続けられますので、経営を引退した後も、会社に対して一定の影響力を及ぼすことが可能です。

(2)は、2005年の会社法改正以前は「営業譲渡」とよばれていたもので、株主総会での特別決議(議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の多数をもって行う決議)が必要とされるものです。相談者が、議決権の3分の2以上にあたる自社の株式を所有していれば実現できます。この方法でも、相談者は自社株を保有し続けられ、会社に対して一定の影響力を及ぼすことが可能です。しかし、事業譲渡だけでは自らの経営者としての地位も会社も存続し続けますので、経営から引退し、会社を清算するためには、ほかに解散の手続きが必要になります。

(3)は、相談者が、所有している自社の株式を譲渡することによって行います。前記のように相談者は、総株主の議決権の過半数にあたる株式を所有していると考えられます。この株式を、会社を経営してくれる人に譲渡すれば、譲り受けた人が自らを取締役に選任することによって、経営者の交代が行えます。

この方法では、相談者は、所有していた株式の対価を得ることが可能ですが、会社の株式を失うことから、会社に対する影響力を行使することができなくなってしまいます。