くらしの法律相談

2007年 神戸新聞掲載『くらしの法律相談』

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「遺産分割のやり直し−再協議は原則不可 事前に十分相談を」神戸新聞 2007年11月6日掲載

執筆者:田中 朋子弁護士

Q:3年前に死亡した父の遺産分割の際、母と同居し、母の面倒を見るとの条件にて、兄が父の一切の財産を相続しました。しかし、兄は母と同居することなく、一人で遊んで暮らしています。もう一度遺産分割をやり直すことは出来るのでしょうか。なお、父の相続人は、母、兄、私の3人です。

A:遺産分割協議は、相続人全員の合意により成立します。

判例によれば、遺産分割協議は一度有効に成立すれば、無効や取り消しの原因がない限り、原則として解除することはできないとされています。遺産分割協議を行うと、遺産は、相続開始の時から各相続人に帰属していたことになるため、やり直しをすると、法的安定性が害されるからです。

ですから、お兄さんが「お母さんと同居し、面倒を見る」との条件を守らなかったとしても、原則として、あなたやお母さんが遺産分割協議を解除して、やり直しを求めることはできません。

もっとも、相続人であるあなたを交えずに、お母さんとお兄さんだけで遺産分割協議をしてしまった場合(無効原因となります)や、お兄さんがあなたやお母さんをだましたり、脅迫したりして、お兄さんに一切の財産を相続させた場合(取り消し原因となります)には、やり直すことができる余地はあります。

また、無効や取り消しの主張ができない場合でも、お兄さんが同意すれば、元の遺産分割協議を解除し、新たに遺産分割をすることはできます。しかし、お母さんの面倒を見るとの約束をしておきながら守っていないようなお兄さんであれば、なかなか話し合いには応じないものと思われます。

このように、遺産分割協議はいったん成立すると、やり直すことは困難ですので、遺産分割協議を行う際には、事前に弁護士に相談するなどして後々のトラブルが起きないよう注意して下さい。