くらしの法律相談

2007年 神戸新聞掲載『くらしの法律相談』

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「突然の婚約破棄−原則、損害賠償請求できる」神戸新聞 2007年12月18日掲載

執筆者:水野 博章弁護士

Q:大学時代から5年間も付き合っていた彼女がいました。結納も済ませ、すでに結婚式の招待状も発送しました。しかし、突然、彼女から、別に好きな人ができたという理由で、結婚できないと言われました。僕は彼女に対し、何か請求できるでしょうか。

A:結論から言うと、あなたは、彼女に結婚式場の前金や解約違約金を請求できる可能性が高いでしょう。また、結納金も原則返還してもらえます。

結婚するとさまざまな義務を負いますが、婚姻届を出す前でも、「婚約」していればその地位に一定の保護が与えられます。

「婚約」とは文字通り結婚の約束ですが、「結婚しよう」と口に出してもその意味は人によっていろいろです。実務的には式場を予約したか、結納は済んだか、などの外形的な事実から婚約の成立を判断していきます。婚約が成立すると、一方が正当な理由なく婚約を破棄した場合に損害賠償の問題が生じます。

あなたは結納を済ませて結婚式場の招待状も発送しているのですから、彼女との婚約が成立していることは間違いなさそうです。また、別に好きな人ができたというだけでは婚約を破棄する正当な理由とは(少なくとも法律上は)言えませんから、あなたは彼女に対して損害賠償を請求できるでしょう。

損害賠償が請求できるのは、結婚式場の前金や解約違約金などの出費です。

では慰謝料はどうでしょうか。

心のつらさはお金にかえられません。それでもこれはひどすぎるからせめてお金で認めてあげよう、これが慰謝料です。妊娠した女性が出産直前に婚約破棄されるようなケースはまさに慰謝料が問題になる事案です。

大学から5年間付き合った彼女に直前で婚約破棄される苦痛も損害ですから、少ないながらも慰謝料が認められる可能性がありますが、費用をかけて裁判をするかどうかは慎重に考えた方が良いでしょう。相手に好きな人ができたこと自体は仕方ありませんし、「せめてお金を・・・」と言いだしにくい事案です。

なお、結納金は、一般に結婚が成立することを前提として交付されているものですから、婚約が解消された場合には、原則返還してもらえます。ただ、地域の慣行がある場合にはそちらに従うべきでしょう。