トピックス

意見表明

≪会の決議と会長声明一覧へ戻る

弁護士自治・弁護士の法律事務独占・厳格な法曹資格制度を否定しようとする動きに強く反対する決議

1998年(平成10年)6月12日
神戸弁護士会

1.自民党司法制度特別調査会は、1997年11月11日、「司法制度改革の基本的な方針(案)−透明なルールと自己責任の社会へ向けて−」(以下、「方針(案)」という。)を発表した。この方針(案)には、我々の方針と一致するものもあるが、一方きわめて重大な問題点が数多く含まれているのであり、その中から特に重要だと思われる論点を掲げれば、以下のとおりである。

 第一に、弁護士自治を否定し、「弁護士の懲戒について外部機関による審査方式を導入すること」等を検討している。
第二に、弁護士の法律事務独占を否定し、「司法書士等の隣接資格者の法律事務への参入」等を検討するとしている。
第三に、法曹資格について、「司法試験あるいは司法修習を経ていない者に対する法曹資格の付与」を検討するとしている。

2.弁護士自治は、弁護士の懲戒権が戦前は司法大臣にゆだねられていたことに対する反省から、戦後における司法の民主化の一環として導入された。戦前、弁護士自治が否定され、弁護士に対する懲戒、監督権を司法省が行使していた制度の下で、如何に国民の権利が侵害されたかは、歴史の教えるところであって、弁護士自治は、国民のために認められている制度なのである。

 弁護士自治が認められる根拠には、弁護士・弁護士会に課せられた人権擁護活動と社会正義の実現、社会秩序維持・法律制度改善努力の義務(弁護士法1条)にその本質部分をみることができる。行政や他の諸権力から独立を 保障されたものであってこそ、上記の立場からの活動、研究、意見発表をよく行うことができる。弁護士自治こそ、弁護士が弁護活動、その他の人権擁護活動の使命を果たすための担保であり、源泉の位置にある。

3.弁護士の法律事務独占は国民に良質な法的サービスを提供するために必要なものとして制度化されているものである。弁護士は国家試験と司法修習制度によって専門知識と専門的技法の習得を求められ、またその業務の遂行にあたっては高度な職業倫理の遵守を要求されている。これに対して誰でもが自由に他人の法律事務を扱うことができるようになれば、弁護士でない者の行う法律事務によって多くの国民が権利を侵害され、あるいは様々な被害を被ることになる。借地借家、交通事故、消費者被害、相続等の法律問題が絶えることなく発生している状況に鑑みれば、こうした事態を招くことは不可避である。現在においても弁護士の法律事務独占の意義は少しも減少しておらず、我々はこれを見直すことには反対である。

4.司法試験及び司法修習を経た者にのみ法曹資格を付与することを原則としている現行制度も国民の権利を守り、国民に良質な法的サービスを提供するために必要なものとして制度化されているものである。

 法律事務の取扱は、その処理如何によって依頼者の生命・身体・財産に重大な影響を及ぼすだけでなく、国の法秩序を害することにもなる。そこで、法律事務を一定の資格を持った者に限って行うことを認めるとともに、資格取得に高度な専門的知識と専門的技能の習得のために、司法試験と司法修習を法曹資格取得の要件としたのである。

 弁護士法第5条の各号に掲げる者には、司法試験・司法修習を経ていなくても法曹資格が付与されているが、1号及び3号は、これらの職にあった者は司法試験合格に匹敵するだけの幅広い専門的法律知識を有するものとの考え方に立ち、2号はこれらの職のあった者はその職務経験が司法修習と同価値であるとの考え方に立って、例外的に司法試験・司法修習を経ない者に法 曹資格を付与したものである。

 厳格な法曹資格制度を維持することが国民の権利を守ることになるのであるから、現在の弁護士法第5条を改正して司法試験・司法修習を経ていない者に対する法曹資格の付与を拡大するべきではない。

5.自民党司法制度特別調査会の方針(案)における弁護士自治・弁護士の法律事務独占・厳格な法曹資格制度を根底から否定しようとするこれらの動きは、これまで国民の人権擁護に資する役割を果たしてきた現行司法制度及び弁護士制度の民主的な要素を奪い去ろうとするものであり、断じて容認することはできない。いまや、司法と弁護士制度は、未曾有の危機を迎えていると言わなければならない。

 我々は、この危機を克服するために、現在の司法制度と弁護士制度が国民の利益を擁護する上で果たしている重要な役割について、国民の理解がさらに得られるように努力する。そして、国民とともに、弁護士自治・弁護士の法律事務独占・厳格な法曹資格制度の破壊を許さないため、全力をあげて奮闘する。

上記のとおり決議する。