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仙台地方裁判所・寺西和史判事補に対する懲戒処分決定に関する会長声明

1998年(平成10年)10月12日
神戸弁護士会 会長 小越 芳保

 平成10年7月24日、仙台高等裁判所は仙台地方裁判所の寺西和史判事補に対する分限裁判において、戒告処分を決定した。

 当会は、本年5月27日、本件懲戒の申立がなされたことについて、寺西判事補の本発言が「積極的政治活動」として懲戒申立の対象とされることは、裁判官の自由な意見表明を封ずることになることに鑑み、仙台地方裁判所による懲戒申立は極めて遺憾であることを表明するとともに、事案の重大性と問題性に鑑み、分限手続においては寺西裁判官から十分な弁明意見を聴取し憲法に照らした慎重なかつ歴史の批判に耐える適正な判断を強く望むものである旨の会長声明を出し、さらに本年8月18日、今回の決定内容及びその経過を見るとき、今回の分限裁判は極めて短期間のうちにしかも同判事補からの十分な弁明と反論がなされないまま結論を導いたきらいは否めず、憲法的論議が尽くされたとは到底言えず、今回の戒告処分決定に対して、重大な疑念を表明するとともに、上級審においては論議を尽くし、裁判官の市民的自由について国民の納得できる判断がなされることを期待する旨の会長声明を出した。

 ところが、最高裁判所は、本年9月2日、寺西裁判官に対し「陳述することがあれば本書面到達後三週間以内に書面をもって陳述されたい」との書面を送付した。右書面の内容からすれば、このままでは寺西裁判官には口頭での陳述の機会さえ与えられないまま仙台高等裁判所の決定同様憲法的論議を尽くしたとは言えない決定が出される恐れがある。

 これまで「積極的に政治運動をすること」を理由に懲戒処分された例はなく、今回の分限裁判は、裁判官の憲法上保障された市民的自由がいかに確保さるべきか、裁判官はいかにあるべきかを問う極めて重大な影響を生ずる裁判であり、それだけに憲法と裁判所法に関する論議を尽くす必要がある。

 よって、当会は、最高裁判所において、本件事案の重大性と問題性に鑑み、寺西裁判官に口頭陳述の機会を与えるなど十分な審理を尽くしたのち、多くの国民に納得のいく歴史に残る憲法的判断を期待して、重ねて声明を発表する次第である。