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少年法改正問題に関する会長声明

1999年(平成11年)5月14日
兵庫県弁護士会 会長 丹治 初彦

政府は、本年3月11日、国会に少年法「改正」案を上程した。

 少年法は、少年が未熟で可塑性に富む存在であること及びどんな少年にも成長発達する権利があることを前提として、非行を犯した少年がその弱点を自覚し、これを克服できるよう教育するということを基本理念としている。

 ところが、「改正」案は、少年審判に検察官が立ち会うことや検察官の抗告権を認め、観護措置期間を現行の最長4週間から最長12週間まで延長するなど、少年法の基本理念を揺るがす重大な問題を含んでいる。

 すなわち、予断排除の原則や伝聞証拠排除法則を採用していない現行の職権主義の下で、少年審判に検察官が立ち会うことを認めると、少年審判の場は、少年を糾問する立場に偏する活動に終始することが避けられず、検察官の追及によって少年の心が閉ざされ、ひいては少年審判の教育的・福祉的機能が損なわれてしまう危険性は極めて大きいといわざるを得ない。

 さらに、検察官に抗告権を付与することは、少年を長期間にわたって不安定な地位に置くことになるし、観護措置期間の延長を認めることは、家裁送致前の23日間の逮捕・勾留期間を併せると、学校の1学期を超える程の長期の身柄拘束が生じることになり、退学や解雇を余儀なくされるなどして、少年の社会復帰に重大な妨げとなる。

 このように、「改正」案は非行少年にとって再出発の場となるべき少年審判の意義をないがしろにするものである。

 私たちは、保護主義の理念に基づく現行少年法が敗戦直後の少年非行の激増と凶悪化に対応するために制定され、その後も十分その機能を果たしていることを忘れてはならない。犯罪白書によると、たとえば少年の殺人事件の数は、昭和50年頃より100件前後で推移しており、特に増加している事実はない。しかも、ピーク時の昭和36年の4分の1にも達していないのである。

 特に、兵庫県においては、須磨小学生殺傷事件などの重大な非行事件が続いたため、少年非行の防止の問題について強い関心が寄せられているが、21世紀を担う少年たちの将来に大きな影響を及ぼす少年法のあり方については、教育関係者、児童福祉関係者をはじめ、市民による十分な議論が尽くされなければならないと考える。

 私たちは、子供たちの健やかな成長を願う者として、十分な議論が尽くされないまま提出された「改正」案に強く反対するものである。