トピックス

意見表明

≪会の決議と会長声明一覧へ戻る

住民基本台帳法改正案に対する会長声明

1999年(平成11年)7月30日
兵庫県弁護士会 会長 丹治 初彦

 去る6月15日、衆議院本会議において、住民基本台帳法の一部を改正する法律案(以下「改正法案」という)が可決され、現在参議院において審議されている。

 改正法案では、すべての国民一人ずつの住民票に「住民票コード」と呼ばれる10桁のコード番号を付し、氏名、住所、性別、生年月日の4情報とともに市町村の電子計算機に登録し、電気通信回線を通じて指定情報処理機関が一括管理するとされている。

 しかしながら、改正法案には、憲法上の権利である国民のプライバシー権保護の観点から重大な疑義があると言わざるを得ない。

 まず第1に、コード番号の利用範囲が、上記4情報に限定される保障がないことである。改正法案は、本来の目的以外での利用をしてはならない旨規定するのみで、提供目的違反に対する罰則規定もない。政府はすでに税務、医療、教育、社会保障・福祉、家族、犯罪情報などの多様な個人情報を保有しており、これらの情報がコード番号と結合される可能性が極めて高い。もし、それらの個人情報がコード番号と結合された場合には、国民総背番号制に道をひらくものであり、国家による個人情報の集中管理が行われることになる危険性をはらんでいる。

 第2に、改正法案は、情報漏洩を防ぐ安全確保措置の徹底、情報を漏洩した公務員に対する罰則ならびに情報の目的外使用の禁止について定めているものの、これだけではプライバシー権の保護として極めて不十分なことである。例えば、現行の行政機関の保有する電子計算機処理にかかる個人情報の保護に関する法律では、処理情報の開示請求権を認め、開示請求による書面開示を原則として義務づけているが、開示請求対象外事項と不開示事項を広範に認めることで、個人情報の保護が実質的に形骸化している。また、情報の目的外利用について、個人の中止請求権も認められていない。

 改正法案においても、個人情報の訂正について、訂正の申出及び再調査の申出ができるだけであって、訂正請求権を認めていない。従って、どのように訂正されるのかは、保有機関の判断にゆだねられることになり、情報が間違っていても適正に訂正することができない。

 このように改正法案には、憲法13条が保証するプライバシーを侵害するさまざまの問題があり、参議院において慎重で踏み込んだ審議が行われることを強く求めるものである。