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少年法改正に関する会長声明

2000年(平成12年)5月1日
兵庫県弁護士会 会長 模 泰吉

 少年法「改正」については、法制審議会が平成11年1月21日、検察官の審判出席と抗告権を認め、観護措置期間を最長12週間に延長するなどを主たる内容とする要綱骨子を採択し、それを受けて政府は、同年3月10日、同内容の「改正」案を国会に提出した。

 兵庫県弁護士会は、同年2月8日には要綱骨子、同年5月14日には「改正」案に対し、予断排除原則や伝聞証拠排除法則を採用していない現行の職権主義の下で検察官の審判出席を認めると、審判は少年を糾問する場と化し、教育的・福祉的機能が損なわれる危険性が極めて大きく、検察官に抗告権を付与すれば、少年を長期間に亘って不安定な地位に置くことになり、観護措置期間の延長によって、退学や解雇を余儀なくされ、少年の社会復帰を妨げるなどと指摘して、これらに反対する旨の会長声明を発表した。

 その後、「改正」案は審議入りできない状況が続いていたが、今般、本年6月頃の衆議院解散が必至となるに及び、「改正」案に、検察官関与を殺人など重大事件に限定する、被害者や遺族が審判を傍聴することを認める、検察官への抗告権付与を削除する、観護措置期間を最長8〜10週間に短縮するなどの修正を加え、今国会中に成立させようとする動きがみられる。

 しかし、検察官の抗告権を排除しても、その審判出席を認めること自体、前述した危険性を孕むものであり、観護措置期間をこの程度短縮したとしても、退学や解雇は避け難く、ひいては少年に非行事実を否認することを断念させ、冤罪につながりかねないことに変わりはない。また、被害者や遺族の審判包丁を認めることは、少年の抱える問題点を明らかにし、その改善方法を探索するために少年の育成歴・人格・家族らのプライバシー等に深く立ち入らなければならない審判の本質的要請である非公開原則に反し、多くの弊害が予想される。このように、「修正」案も、「必罰化」「厳罰化」を企図した「改正」案と根本的には変わらず、少年の可塑性に信頼し、教育的・福祉的働きかけによって少年を健全に保護・育成しようとする少年法の理念に悖るものであると言わざるを得ない。

 さらに、少年法は、教育基本法や児童福祉法とともに、将来を有し、次代を担うべき少年の健全な成長を支える基本法である。したがって、その改正には、審判における教育的・福祉的機能、適正手続の保障、被害者の関与など諸問題について、法律関係者のみならず、教育・福祉関係者や心理・精神面の専門家、被害者をはじめ幅広く国民の意見を聴取し、慎重かつ徹底的に議論を尽くすべきである。

 よって、当会としては、「修正」案に対しても、強く反対の意を表明するとともに、政治的情勢に左右されて杜撰で拙速な審議をすることのないよう求めるものである。