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意見表明

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有事法制法案に反対する声明

2002年(平成14年)5月16日
兵庫県弁護士会 会長 藤野 亮司

 2002年(平成14年)4月17日、政府は衆議院に「武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国民及び国民の安全の確保に関する法律案」、「安全保障会議設置法の一部を改正する法律案」、「自衛隊法及び防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案」を上程した(以下「有事法制3法案」という。)。

 そして、4月26日衆議院本会議において趣旨説明がなされ、各党からの代表質問がされ、特別委員会における審議が本格的に開始される状況にある。

 日本弁護士連合会は、4月20日の理事会において、憲法原理に照らし、有事法制3法案には、重大な問題点と危険性が存在するとして、同法案に反対し、同法案を廃案にするように求める旨の決議を採択し公表した。

 当弁護士会も、以下の点からみて、同法案には憲法上看過できない疑義が存在すると考える。

1.「武力攻撃のおそれのある事態」や「事態が緊迫し、武力攻撃が予測されるに至った事態」までが「武力攻撃事態」とされており、その範囲・概念は極めて曖昧である。政府の判断によりどのようにも「武力攻撃事態」を認定することが可能である。

2.いったん内閣により「武力攻撃事態」の認定が行われると、陣地構築、軍事物資の確保等のための私有財産の収用・使用、軍隊・軍事物資の輸送、戦傷者治療等のための市民に対する役務の強制、交通、通信、経済等の市民生活・経済活動の規制などを行うことにより、市民の基本的人権を大きく制限することとなる。しかも、取扱物資の保管命令違反に対しては、6月以下の懲役、立入検査権拒否、妨害等に対しては20万円以下の罰金が科されるなど、刑罰による強制も規定されている。これは憲法規範の中核をなす基本的人権保障原理に背反する重大な危険性を有する。

3.「武力攻撃事態」という曖昧な概念の下で自衛隊による武力行使や部隊の活動を円滑・効果的に行なうための措置を広く認めるこれらの法案は、憲法前文や憲法9条の定める平和主義、戦争放棄、戦力の不保持及び交戦権否認の規定に抵触するのではないかとの重大な疑念がある。「武力攻撃事態」が周辺事態法に定められた米軍の軍事活動に対する自衛隊の後方地域支援活動等に際して発生した場合、自衛隊の米軍との共同行動は、政府見解でも違憲とされている「集団的自衛権」の行使にさらに大きく踏み込むこととなるおそれが強い。

4.武力の行使、情報・経済の統制等を含む幅広い事態対処権限を内閣総理大臣に集中し、その事務を閣内の「対策本部」に所掌させることは、行政権は合議体である内閣に属するとの憲法規定と抵触し、また内閣総理大臣の地方公共団体に対する指示権及び地方公共団体が行う措置を直接実施する権限は地方自治の本旨に反し、憲法が定める民主的な統治構造を大きく変容させ、民主政治の基盤を侵食する危険性を有する。なお、対処措置に関する重要事項等を定める「対処基本方針」につき、国会の承認を求めなければならないとされてはいるものの、承認をなすべき期間は定められておらず、国会による修正権限や承認後における濫用抑制権限の存否も明確ではない。

5.日本放送協会(NHK)などの放送機関を指定公共機関とし、これらに対し、「必要な措置を実施する責務」を負わせ、内閣総理大臣が、対処措置を実施すべきことを指示し、実施されないときは自ら直接対処措置を実施することができるとすることにより、政府が放送メディアを統制下に置き、市民の知る権利、メディアの権力監視機能、報道の自由を侵害し、国民主権と民主主義の基盤を崩壊させる危険を有する。

 このように、有事法制3法案は、武力又は軍事力の行使を許容するための強大な権限を内閣総理大臣に付与する授権法であり、基本的人権侵害のおそれ、平和原則への抵触のおそれだけでなく、憲法が予定する民主的な統治構造を変容させ、地方公共団体、メディアを含む指定公共機関の責務と内閣総理大臣の指示権、直接実施権及び国民の協力・努力義務を定めることにより、国家総動員体制への道を切り開く重大な危険性を有するものである。

 したがって、当弁護士会は、有事法制3法案には、上記の重大な問題が存在し、憲法規範の中核をなす基本的人権保障原理に反する重大な危険性を有する点で、国民の基本的人権や生活に重大な影響を及ぼすことを懸念する。また、有事法制の必要性及びその内容については、国民の間にも様々な意見が存するところであり、主権者である国民一人一人がその点について慎重に見極めることができるよう、広く国民的な議論を尽くした上で国会に上程するべきであり、今回の法案の国会上程は、拙速であると考える。

 特に、兵庫県には、神戸港という全国でも有数の港湾を擁し、その利便性が大きいことを考えると、ひとたび「武力攻撃事態」との認定がなされれば、神戸港が軍事目的に利用される可能性が大きい。このような軍事目的の利用を規制するために、神戸港の利用に関しては、1975年3月に神戸市会が全会一致で「核兵器積載艦艇の神戸港入港拒否に関する決議」(いわゆる非核神戸方式)を採択しているが、神戸におけるこのような平和憲法の理念を実践してきた歴史に鑑みても、有事法制3法案をこのまま見過ごすことはできない。

 よって、当弁護士会は、有事法制3法案の重大性、危険性に鑑み、同法案の問題点を国民に明らかにするとともに、国民が十分に議論する機会が保障されないままでの同法案の成立に反対するものである。

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