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共謀罪の新設に反対する再度の声明

〜内心の自由を侵害し思想処罰を招くおそれのある共謀罪は認めません〜

2005年(平成17年)10月3日
兵庫県弁護士会 会長 藤井 伊久雄

 本年8月の衆議院解散により廃案となった「犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案」(以下「本法案」という)が、現在開会中の特別国会に再度上程され、政府は総選挙における与党大勝を背景に、極めて短期間の審理で成立を期そうとしています。

 本法案は、「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約」(以下「国連条約」という)に基づき国内法化を図るものとして2003年の通常国会から審議されてきたものですが、いわゆる「共謀罪」の新設を含むことから、日弁連を初め当会も本年7月21日に会長声明を発し、強く反対してきました。

 本法案に盛り込まれた「共謀罪」は、長期4年以上の刑を定める犯罪について、団体の活動として共謀した者を、5年以下もしくは2年以下の懲役または禁固に処するというものです。従って、犯罪の実行行為がなくとも、関係者の単なる「合意」だけで処罰ができることとなり、内心の自由を侵害し、思想・表現に対する処罰に限りなく近くなるだけでなく、対象罪名は約600に上り、重罪に対する例外措置というより、窃盗・詐欺や傷害などほとんどの刑法犯罪について、未遂にさえ至っていない段階で、広範に共謀罪を科すことになり、「実行行為を処罰する」という近代刑法の体系を根本から覆すことになります。これは、戦前の治安立法による深刻な内心の自由の侵害、思想言論表現の弾圧への反省から再出発した戦後日本の基本原則を脅かしかねない重大問題です。

 さらに、本法案の契機でもある国連条約が求めているのはテロ組織など国際的な組織的犯罪集団の取り締まりであるにもかかわらず、本法案では広く一般の政党、NPOなど市民団体、労働組合、企業等の活動も処罰されるおそれがあります。たとえば、市民団体がマンションの建設に反対して現場で座り込みをしたり、労働組合が徹夜も辞さずに団体交渉を続けようと決めるだけで、組織的威力業務妨害罪や監禁罪の共謀罪とされる危険性を含んでいます。

 一部の報道によると、テロ対策として求められるとされていますが、テロ犯罪は主として爆弾等を使用した殺人の形をとることが多いところ、現行法でも殺人罪には準備行為の段階から、爆発物取締罰則違反は共謀の段階から取り締まりが可能であり、新たな刑罰法規を設ける必要はないと考えられます。

 共謀罪が導入されると、犯罪捜査においても、広範囲の盗聴やメールの傍受などが必要になり、取調においても自白強要の傾向が強まり、人権侵害の頻発、警察が市民生活の隅々まで入り込む監視社会をもたらす危険も否定できません。自首による刑の減免が規定されることから密告などの風潮も強まりかねません。

 このように、共謀罪の新設は、思想信条の自由など重要な基本的人権を侵害し、自白強要の取調方法が強まり、監視社会を招くなど、市民生活にとって重大な脅威になるものであり、その新設に再度、強く反対します。