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住宅の安全確保に関する会長声明

〜阪神・淡路大震災から11年を迎えて〜

2006年(平成18年)1月17日
兵庫県弁護士会 会長 藤井 伊久雄

 本日、阪神・淡路大震災から11年を迎えます。震災では約25万棟・約46万世帯が全半壊し、6434人の尊い命が失われました。その8割近くは建物の倒壊等によるもので、倒壊した建物の大半は、新耐震基準が施行された1981(昭和56)年以前に建築された既存不適格建物や、欠陥住宅など、現行の耐震基準を満たさない、構造安全性に問題のある建物であったと考えられます。

  日本弁護士連合会では、阪神・淡路大震災の教訓等に基づいて、昨年11月11日鳥取において開催された第48回人権擁護大会において「安全な住宅に居住する権利」が基本的人権であることを宣言し、建築確認・検査制度の改善、建築士制度の改革等を内容とする法整備・施策を求める決議を採択しましたが、その直後にいわゆる耐震偽装問題が発覚し、宣言で指摘された問題が現実化することとなりました。

  耐震偽装問題は、我が国の建築・住宅行政が経済振興に資するような形で行われ、人命が軽視されてきたという根本的欠陥を白日の下に晒すことになったといえます。当会は、阪神淡路大震災を経験した弁護士会として、かねてより災害対策の充実、特に市民生活の基盤となる住宅に関する施策の必要性を強く訴えてきましたが、耐震性不足の恐怖を身をもって体験した経験から、人命を守るために耐震強度を含む住宅の安全確保は極めて重要な課題であると考えています。 国民の「安全な住宅に居住する権利」を保障するためには、新築住宅において構造偽装のような欠陥建築の再発を防止するとともに、我が国にいまだに約1150万戸存在すると言われる既存不適格建物について、一刻も早く耐震化を進め、既存住宅の安全性をも確保することが極めて重要です。

  すなわち、事前に住宅の耐震強度を確保することは人命そのものを守るために最低限必要な防災対策であり、また不幸にして災害が発生し建物が倒壊して住宅を失った市民のためには、速やかに新たな住居を確保し生活を再建するための効果的な支援策が行われなければなりません。このように事前の予防と事後の救済は表裏一体の関係にあり、災害対策においては、事前の予防策と事後の復旧復興施策とがバランス良く実施されなければなりません。現在の自然災害の被災者の救済・支援制度は不十分であり、とりわけ民間個人住宅に対する支援策が極めて限定的です。そのため被災者は住宅再建にあたって重い負担を余儀なくされてきましたが、その後も、我が国の施策改善は遅々として進んでおらず、今後同様のことが繰り返されることのないようにするための政策が急務であります。

  当会は、安全な住宅に居住する権利を確保するために、現在の建築行政の不備を正すだけでなく、耐震化を進める施策を緊急に整備し、さらに救済支援政策を有機的に結びつけるトータルなシステムの構築が必要であると考えます。 そこで、国及び自治体に対し、(1)建築行政のあり方を根本的に見直し、建築基準法の遵守を徹底させ適正な建築を行わしめるべく建築確認や中間・完了検査等の実効的な制度を構築すること、(2)耐震基準を満たさない既存不適格の民間住宅等を含む建物の耐震改修促進の施策を早急に講じること、そのために建物の安全性に関する知識の普及、情報の提供、耐震改修のための環境整備や負担軽減、建築物の耐震改修の促進に関する法律の抜本的改正など、トータルな観点に立った施策を強力に推進すること、(3)災害等により住宅を失った者に対する恒常的かつ十分な支援策を確立すること、を求めるものです。

以上