くらしの法律相談

HOME > くらしの法律相談 > 2008年 神戸新聞掲載『くらしの法律』相談 > 示談金の負担−従業員、使用者の両方に責任
消費者問題判例検索
弁護士と司法書士の違い
弁護士の職務と行政書士の職務の違い
ヒマリオンの部屋
こんなときはこちら
アクセス連絡先はこちら

2008年 神戸新聞掲載『くらしの法律』相談

示談金の負担−従業員、使用者の両方に責任 神戸新聞 2008年3月4日掲載

執筆者:森川 拓弁護士

Q:飲食店でアルバイト中、不注意で熱いスープをお客さんにこぼしてしまい、お客さんがやけどしました。
幸い勤務先とお客さんとの間で示談が成立しましたが、勤務先からは、お客さんに支払った示談金全額を私に請求するといわれました。
私は従わなければならないのでしょうか。

A:結論からいえば、全額を支払わなければならないことはありません。
 まず、あなたの不注意でお客さんにやけどをさせたわけですから、本来あなたは、お客さんの受けた損害を賠償しなければなりません。
ただ、お客さんの損害を賠償しなければならないのは、あなただけではありません。
あなたの勤務先である使用者もあなたとともに損害を賠償しなければなりません。
なお、法律上は従業員が勤務中に第三者に損害を与えた場合、使用者が責任を負わない場合もあると定めてはいますが、ほとんどの場合で使用者も従業員と共に責任を負うことになります。
そこで、あなたの勤務先がお客さんと示談をしたわけです。
 このように従業員がしたことに使用者も責任を負うとされているのは、(1)従業員を雇って事業を拡大すれば、社会への危険も拡大させることになるので(例えば、従業員を数多く雇って配達業を営めば、事故のリスクは高まります。)、社会に危険を作り出した者は、その危険が現実化した場合の損害を負担すべきという考え方、さらに、(2)使用者が自らの利益のために事業を拡大してきたのに、損害が発生した場合には、従業員のみの責任であるとするのは不誠実であるという考え方、に基づきます。
 このような考え方からすると、あなたが生じさせた損害を全てあなたが負担するというのは、筋が通らないといえます。
これまでの裁判例でも、使用者が先に示談金を支払った後、従業員に請求できるのは、事業の規模、労働条件、従業員の加害行為の態様等を考慮して、「損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度」であるとしています。
 あなたの場合も、諸事情を考慮する必要があるため一概にはいえませんが、少なくとも全てをあなたの負担とするのはおかしいとして、交渉できると考えます。

掲載年一覧

ページのトップへ
兵庫県弁護士会