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2008年 神戸新聞掲載『くらしの法律』相談

事故避けようとして別の車と衝突−「緊急避難」との判断がカギ 神戸新聞 2008年11月4日掲載

執筆者:安田 孝弘弁護士

Q:高速道路をバイクで走行中、隣のトラックが合図もなく突然車線変更してきました。
それを避けるため、ハンドルを切ったところ、別の車と衝突してしまいました。
ハンドルを切らなければトラックと間違いなく衝突していましたが、それでも私に責任はあるのでしょうか。

A:交通事故の責任には、自動車運転過失致傷罪などの刑事上の責任と不法行為に基づく損害賠償責任という民事上の責任があります。
本件でも、相談者と衝突した車両の乗員らが死傷すれば、相談者について、刑事上・民事上両方の責任が問題とされます。
 本件の刑事上の責任については、相談者の行動が、刑法37条1項本文の緊急避難に該当するのかという問題に帰着します。
 緊急避難とは、(1)自己又は他人の生命、身体、自由又は財産に対する現在の危難を避けるため(2)やむを得ずにした行為は(3)これによって生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合に限り、違法性を阻却され、罪とならないという制度です。
 したがって、本件でも相談者の行動が(1)から(3)の要件を充足すれば、相談者は刑事上の責任を問われることはなくなります。
 本件では(1)高速道路上で隣の車線を走っていたトラックが突然合図なく車線変更してくることは、相談者の車両とトラックが衝突し、相談者が死傷する危険性のある出来事であり、相談者の生命、身体に対する現在の危難にあたると考えられます。
 そして(2)相談者はハンドルを切らなければトラックと間違いなく衝突していたのであり、急ブレーキをかけるなどほかの回避行動をとる余地がなかったことからして、相談者のとった行動は、やむを得ずにした行為にもあたると考えられます。
 したがって、本件で相談者のとった行動が緊急避難に該当するかどうかは、相談者と衝突した他の車両に乗っていた人の死傷の程度などの被害状況によることになるでしょう。
 もっとも、被害状況が大きく、相談者の取った行動が(3)の要件を満たさない場合でも、刑法37条1項ただし書きの過剰避難として、情状により刑の減免がなされることもあります。
 そして、相談者の行動が緊急避難にあたる場合には、 相談者は民事上の責任も負わないということになるでしょう。

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