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2008年 神戸新聞掲載『くらしの法律』相談

交通事故の因果関係−支払い義務ない財布紛失 神戸新聞 2008年11月18日掲載

執筆者:木下 靖章弁護士

Q:交通事故で怪我をさせた被害者から「治療のため病院に行く途中財布を落とした」として、財布に入れていたお金を請求されています。
 被害者は「事故がなければ、病院には行っておらず、財布も落としていない」と主張しています。
 私は、どこまで払わなければならないのでしょうか。

A:交通事故で相手に損害を生じさせた場合、その損害に見合ったお金を相手に対し支払う義務が生じます(不法行為に基づく損害賠償義務)。
このお金を支払う義務は、事故がなければ損害が生じなかったといえるような場合であって初めて生じます。
すなわち、事故と発生した損害との間には因果関係が必要とされています。
 とすると、本事例の場合、被害者は事故がなければ病院に行っておらず、財布も落としていないはずですから因果関係はあるようにも思えます。
 しかし、事故がなければ損害が生じなかったといえる全ての場合に因果関係を認めてしまったのでは、お金を支払う義務の範囲が無限に拡大しかねず、いくら加害者とはいえ、その責任があまりにも重くなりすぎてしまいます。
例えば、本事例の被害者が財布を落としたので交番へ行く途中、転んで骨折をし、学生であった被害者は3か月間大学の講義を欠席せざるを得なくなり、その結果留年して内定していた会社に就職できなくなってしまったという場合を考えてみてください。
 そのような、およそ一般常識からかけ離れた結果とならないよう、法律上、因果関係のある損害とは、常識的に考えて加害者が行ったことから発生するのが通常であろう損害に限られるとされています。
 本事例をみてみると、交通事故で被害者にけがをさせた場合、一般の人であれば治療のため病院に行ったとしてもほとんどの場合財布を落とさないでしょうから、財布を紛失したことについては、因果関係はないということになります。
 したがって、落とした財布に入っていたお金については支払う必要はありません。

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